初夏が近づいていました。
毎晩のように書きつづっていた私の小説は、ラストをむかえていました。
その小説の送り先をさがして、わたしは本屋へ行きました。
すると、ある文芸誌に、大きな新人賞の募集がのっていました。
しめきり直前です。
わたしは小説をばたばたと仕上げ、規定の枚数を少し超えたけれど*
「まあ、いいや」
と、あらすじと自分の略歴を書き
(*この時は知りませんでしたが、規定の枚数を超えたらそれだけで落選です。ご注意くださいね)
用紙を一枚一枚ワープロに手ざしで印刷して、しめきり当日の昼休み、職場の近くにある郵便局へもっていきました。
「投稿」なんて、何年ぶりのことでしょう?
大学生の頃、わたしは少女まんがや歌詞を何度か投稿し、入賞や入選しました。
でも、作品を雑誌社に送るとき、わたしはいつも、郵便局の人が怖いのです。
自分の望みを、人に知られる。
それが、とても恥ずかしい。
そんな小心者なのに、心の中ではわたしは、傲慢に一等賞をねらっています。
このときのわたしも、あいかわらず郵便局の人恐怖症で、そのくせ、もうこんなことを考えていました。
「受賞パーティには、なにを着ていこうかしら?」
家の庭では八重桜が豪華に花をつけ、吹雪をおこして春を閉じていきました。

