草原でも、道路でも、庭でも、ピピはいつも鼻を地面すれすれに低くして歩きます。
なぜなら、ビーグルはもともと嗅覚系の猟犬としてつくられた犬種だからです。
地面をかぎやすいよう、体そのものも低いのです。
そんなピピから見る世界は、いったいどんな眺めなのでしょう?
わたしも、からだを低くして、顔を地面に近づけてみました。
・・すると・・・・
まず、草原が、ひとつひとつの草に変わりました。
丸い草、広い草、長く尖った草。
それらがぼんやりと混ざっていた草原ぜんたいの弱いにおいも、それぞれの草の息、その下の土の息、というぐあいに、くっきりと分かれたのです。
そして、ピピの高さから見ると、その草たちは、ドアになってゆれるのでした。
(おいで、おいで・・・・)
ドアはやわらかくゆれながら、どこまでも、どこまでも奥へ続いていきます。
その先に、なにかとんでもない、すばらしい世界が待っているように。