子犬のこころの葛藤をものがたる | 4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

アメリカ暮らし漫画と昔の日本での愛犬物語です。

 

 冬が、別れのあいさつをしていました。
強い、寒い風が毎晩ふきつづけます。

ピピが寝ている通路と、外の庭との仕切りに立てた厚い板が
「ガタン!!」
 と倒れます。

姫は泣きました。
「おんおん、おんおん。おーい、おーい・・」


ピピはふたたび、わたしの部屋に泊まることになりました。

 

 夕食がすむと、わたしとピピはひとしきり庭であそびます。
それから、玄関ドアの前でピピの足を4つ、タオルでふいて、家へはいります。

2階へつづく階段では、運動会みたいに競争です。

 

ピピは背中を丸めて
「ちょんこちょんこちょんこちょんこ!!」
 つめをたてて、全身運動で階段をのぼりました。

 

 

 この強気なちびっこは、古巣へもどったギャングか悪魔のように、わたしの部屋を荒らしました。

スリッパをくわえてきて、齧(かじ)ります。

たたみを齧ります。壁を齧ります。

(・・どうしてこんなに強気なのか、ぜんぜんわかりません。)
 

わたしは、ピピがくわえてくるたびにスリッパをとりあげました。

そのスリッパで、ピピの小さなあたまを
「パシン!」
 とたたきます。

 

たたかれると、ピピはわたしのほうは見ず、でも目だけ強く光らせて、
(・・・くつじょく!)
 といった表情を、やっぱり小さなかおに浮かべていました。

 


 

 

 そんな、ある晩のことです。
何回かこの「くわえてきて、パシン!」をくりかえしたあと、ピピはもう一度、わたしのスリッパをとりに廊下へ出ていきました。

それから
「どたどた、どたどた!」
 なんだか、ひとりで騒いでいるようです・・・

 

そして部屋に帰ってきたとき、ピピはなにもくわえていなかったのです。
あとで、わたしは廊下に出て、しばらく立ちつくしたまま、床を見おろしていました・・・

 

そこには、わたしのひとくみのスリッパが
「あっち!」
 と
「こーっち!」
 とに、まるで決闘したあとのアザラシさながら、あおむけになり、横だおしになり、ピピの深いふかい悩みと激しい葛藤(かっとう)とを、如実(にょじつ)に物語っていたのです。