ポンパドゥール夫人の話や、その後のルイ16世とマリー・アントワネットの話は、けっこう耳にしていたけれど、この女性については知らなかった。

「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」

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ジャンヌ(マイウェン、監督も)は貧しい私生児として生まれ、修道院で教育は受けたものの身持ちが悪くて侍女を失職。娼婦として暮らす。
しかしデュ・バリー伯爵(メルヴィル・プポー)に囲われ、上流社会の男性の相手をするようになり、リシュリュー公爵(ピエール・リシャール)に見出されて、とうとう国王ルイ15世(ジョニー・デップ)の目に留まる。

ルイ15世は、1964年に愛妾のポンパドゥール夫人を亡くし、68年には王妃をも亡くし、その頃にジャンヌと出会った。愛妾は切れ目がないほどの艶福家。

この当時、王の公妾になるには、なんと既婚でなくてはならなかった。奇妙な習慣だが、それでジャンヌはデュ・バリーの弟と結婚して、王の妾になりヴェルサイユ宮殿デビュー。

貧しい出自と宮廷の女性たちは嫌うが、王の側近ラ・ボルト(バンジャマン・ラヴェルネ)らは親切で、男性達は美貌に見とれ、気さくなジャンヌは人気だったそうだ。王からはルーヴシエンヌ城まで贈られている。

面白かったのは、宮廷での振舞。王に背を向けてはいけないためカタカタと靴音も高く後ずさる。先に言葉をかけてもいけないし、見詰めてもいけない。挨拶の仕方、大きく結い上げた髪型、リボン、レース、造花などで飾られた淡い色のロココ調の衣裳の豪華さ。

やがて王太子にマリー・アントワネット(ポーリン・ポールマン、似ているそうです)が嫁いでくる。彼女は娼婦や妾を嫌った母のマリア・テレジアの教育を受け、またルイ15世の娘たちから吹き込まれて、ジャンヌを疎んじた。しかし、対立を恐れた司教たちに説得されて、ジャンヌにひと声かける。ジャンヌは素直に喜ぶのだ。

ルイ15世が疱瘡で倒れるとジャンヌは感染も恐れずに看病をするが、危篤の病床から修道院に追い払われる。王の命は何と燭台に立てた蝋燭をベランダに持ち出して国民に知らせる。そして亡くなると喪に服するのは一部の人のみで、すぐさま新王ルイ16世の即位の祝祭となる。

この時代への好奇心は充たされる。一番残念だったのは、マリー・アントワネットはまだ幼いし、望んで修道院に行ったルイーズの2人はともかく、ジャンヌを含めた宮廷の女性たちが揃って見栄っ張りで競争心ばかり、たいして美しくもなく愚かで下品に描かれていること。どこかで知性や高貴さの片鱗でも見せるシーンがほしかった。


好奇心は充たされるけれど、ドラマとしては★3.5かな。
デュ・バリー夫人の簡単解説。