NYには3回しか行ったことが無い。1回目は郊外のオールドグリニッジの個人宅に10日ほどお世話になり、せっせとNYに通った。2回目は家族で冬休みに遊びに行った。新年になった途端に高いビルの窓から紙切れが雪のように降って来た。3回目は最初にホームステイした家のお孫さんの結婚式に招かれて、長男と2人旅。フロリダに行く途中に寄った。

 

ある家庭のお手伝いさんはメキシコ人で、ブリトーを作ってくれたことをこの映画を観て思い出した。彼女が他の日よりもウキウキ楽しそうにしていたのは、きっとお国の自慢料理を日本人に紹介できたからかなと思う。

 

「ニューヨーク・オールド・アパートメント」


https://m-pictures.net/noa/

ポール(アドリアーノ・デュラン)とティト(マルセロ・デュラン)は双子。母のラファエラ(マガリ・ソルエラ)と、ニューヨークの小さなアパートで暮らす。

3人はペルーからの不法移民で、滞在許可証すら持っていない。双子は移民のための語学校に通いつつ食事の配達をし、ラファエラはウェイトレスとして働く。

双子は語学校で出会った、クロアチアから来た年上の美女クリスティン(タラ・サラー)に惹かれる。3人で楽しそうにNYの街を闊歩する。


一方、ラファエラは、スイス人の自称小説家エドワルド(サイモン・ケザー)と知り合い、投資すると言われて家でブリトーの出前を始める。彼はアパートに転がり込み、せっせとブリトーを作るのはラファエル。エドワルドは注文電話を取るだけだ。

クリスティンに写真を貰ってウキウキのポールとティトだが、クリスティンには収監されてる恋人がいた。そして彼の保釈金のために、売春までしていたのだ。しかし保釈の日、白いドレスに真っ赤なマニキュアをして会いに行くと、駆け寄る坊やと妻の姿が…。

「透明人間のように生きるのは嫌だ」とティトは言うが、不法移民の薄氷の上のような厳しい暮らしが描かれる。どこまでも明るいポールとティト。しかし、突然、姿を消し、ラファエルは必死に息子たちを探す。

懸命に生きるこの家族に、何とか道が開けるようにと願わずにいられない。最後のシーン、歩き続ける2人の道が希望につながりますように。★は3.5


この映画のマーク・ウィルキンス監督はシュタイナー学校の卒業生でスイス人、ウクライナ人の妻を持ち、6年前からキーフに暮らしてモダンアートの店も経営していた。ロシアのウクライナ侵攻で、いったんはベルリンに逃れたが。またウクライナのリヴィウに戻ったという。 https://www.swissinfo.ch/jpn/business/47398614

この映画でも、語学校の教師の「戦争を体験した人は?」に半数位の生徒が手を挙げるシーンがあったが、多くの移民の状況を表しているのだろう。彼ら一家は、父親の暴力と経済的困窮のようだが、故国では暮らしていけないことには変わりないのかもしれない。
幸いにも私は日々の食事が出来て、安心して平和な国に暮らしている。想像もつかない日々を送っている人のことを忘れないようにしたい。
https://eleminist.com/article/279