日本海に向けてミサイル発射を続ける北朝鮮。年末には国営朝鮮中央通信は、「金正恩総書記が韓国との関係は、もはや同族ではなく敵対的な二国間関係、交戦国と述べた」と報じている。新年になってからも国境付近の韓国延坪島近辺を砲撃。何を考えているのだろうか、どんな効果を狙っているのだろう。

第二次大戦が終わった1945年、日本軍が敗走した朝鮮半島は、実質、米国とソ連の争いとなり1948年に南側で「大韓民国」、北側で「朝鮮民主主義人民共和国」がそれぞれ樹立宣言した。

北朝鮮は独立以来、金日成、正日、正恩3代の世襲独裁体制をとり、国民には「地上の楽園」と吹き込んだが、国際社会で孤立化するにつれ、経済は回らず貧困や飢餓に陥る人々が増加した。一方で一糸乱れぬ軍事パレードやマスゲーム、そして金一族を神のようにあがめさせる教育をした。それに外れた生き方や発言をすれば密告や拷問、そして強制収容所に送られて過酷な労働が待っている。
 

その北朝鮮からの一家5人の逃避行のドキュメンタリー。
よくぞ撮ったと思う。スマホで撮影してチップを何とか持ち出したのだそうだ。


「ビヨンド・ユートピア 脱北」


https://transformer.co.jp/m/beyondutopia/

韓国のキム・ソンウン牧師の携帯電話に、SOSが入る。夫婦と子ども2人と80代の老婆の一家5人が北朝鮮から中国へ渡ったものの山間部で迷っているという知らせだ。
牧師は、2000年以来、1200人の脱北を手助けしてきた。

韓国と北朝鮮との間には無数の地雷が敷かれて、脱北のルートは中国しかない。中国からベトナム、ラオス、タイを経て韓国を目指すのだが、中国、ベトナム、ラオスで捕まれば、北朝鮮に送り返され、強制労働ならマシな方で死刑も。

家族5人は現地で牧師と会って、ルートを辿る。ブローカーが手引きする。彼らも手助けはするが、牧師とは違って金儲けも目的。

中国の森の中を12時間も彷徨い、河を渡り…無事、危険地帯も過ぎて、ホッと寛ぐ家族。

 

家族へのインタビューがあるが、老婆の答えに洗脳とはこういうことかと唖然とする。明らかに豊かな生活を目にして、金主席は偉大なのに、北朝鮮が貧しいのは国民が悪いのだろうか…という。


韓国での彼らの生活が、心安らかなものでありますように。

もう一組も並行して描かれている。脱北して韓国に暮らす母親は、18歳になる息子を脱北させたい。

しかし彼は捕まり、収容所に送られたらしく、連絡は途絶えた。
何ともやり切れない。


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今までに観た、北朝鮮関連の映画を記しておきます。興味があれば配信などでどうぞ。
18年6月の「ワンダーランド北朝鮮」は、ドキュメンタリー映画ですが、まさに許可された人・場面を撮影したという作品で、そのままプロパガンダ映画になっている。

17年12月「太陽の下で 真実の北朝鮮」では、政府が用意した少女の家族が主人公だったが、許可された時間の前後も撮影したために、事実が見えてしまった。主人公の少女やその家族。撮影セットをした北朝鮮関係者が、その後どうなったかと気になるほど。

ドラマは、脱北者の体験や取材をもとにしているものが多いようだ。
10年4月の「クロッシング」は、北朝鮮のある家族の離散を描く悲惨なドラマ。

13年10月の「かぞくのくに」は在日の家庭に、帰国事業で北朝鮮に帰国して、病を得た息子が帰って来た…。

14年10月の「レッド・ファミリー」 コメディがコミカルでなくなる韓国映画。

18年6月「VIP修羅の獣たち」は、南北の刑事が協力するバイオレンス映画。

20年2月「スウィングキッズ」は、捕虜収容所。軽快な見事なタップダンスで友好?と呑気に観ていたら、怒涛のラスト。


韓国映画が多いですが、どれも巧いですね。