BS1で「遠い夜明け」を放映していた。この映画を観るのはTVで2回目? 3回目かしら。いつも劇場映画を書くのだが、この映画は感慨深い。

 

「遠い夜明け」


南アの黒人居留地に突然、警察車両が押し寄せ、武装警官が居留地の人々を襲い、家を打ち壊す。政府はこの事態を隠蔽した。

新聞編集長のドナルド・ウッズ(ケビン・クライン)は、反アパルトヘイトの運動家スティーヴ・ビコ(デンゼル・ワシントン)を訪ね、話を聞く。最初は、ビコは反白人の扇動者と思っていたウッズだが、自分の思い違いに気付き、新聞社に黒人の記者2人を雇う。

ビコら黒人たちは、公民館をつくって学びの場としたり、村を作る活動を続け、支援者が増える。しかし村が襲われ、しかも中に警察署長がいた。ウッズは警視総監に訴えるが、それは彼の命令だったことを知る。

「白人を追い出して黒人の国に」という仲間に、ビコは「白人と同じように、力で支配する国を作ってどうするのだ」と問いかける。どんなに酷い目に合わされても、仕返しではなく、より良くする理想を持つ彼は「希望」を失わなかった。

しかしビコは逮捕され、拷問で殺される。ウッズはビコの死の真実を記事にしようとするが、ウッズの家族にまで、公安警察の手が伸びる。ウッズはビコの死の記事を出版しようと、とうとう家族と二手に分かれて南ア国境を越えようとする。この逃走はスリル。映画としてとても良く出来ている。


南アのことは、アパルトヘイトの酷さを知ってから、南ア製品ボイコットの運動に加わり(息子たちも大好きなアップルタイザーを諦めてくれた)記事にもした。
27年間も獄中にあったネルソン・マンデラが釈放されて1990年に来日した時は、日比谷の野外音楽堂での集会で彼の声を聴き、姿を見、後に国歌となる「Nkosi Sikelel' iAfrika(神よ、アフリカに祝福を)」を皆で一緒に歌った。

1995年の来日は南ア大統領としてだった。「インビクタス 負けざる者たち」は、マンデラが大統領になってからのラグビー試合のストーリー。白人も黒人も一緒に戦う。これも良い映画だった。

 

いろいろな問題を考えたり、端っこで関わったりしてきたけれど、アパルトヘイトは人として許せない、無くさなくてはと、祈りにも似た思いだった。未だに「Nkosi Sikelel' iAfrika」の歌を聞くと胸が一杯になる。


南アのアパルトヘイトは今や歴史だ。しかしさすがに国家の制度ではなくとも、未だに人種差別は、日本でも米国でもその他の国でも起きている。