リチャード三世はヨーク朝の最後の王。次のテューダー朝で悪徳をなした王とする評価が定まり、それに基づくシェイクスピア劇がある。対して、それはテューダー朝の見方であって、実は立派な王だったという「リカーディアン(リチャード三世協会)」の主張もある。

ロスト・キング 500年越しの運命」

https://culture-pub.jp/lostking/

2人の息子と夫のいるフィリッパ・ラングリー(サリー・ホーキング)が、不明だったリチャード三世の埋葬地を見つけたという実話をもとにしている。ある日、彼女は息子と一緒にシェイクスピア劇「リチャード三世」を観る。そして彼がそんなに悪い王だったのかという疑いを抱く。

筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)で上司が評価しない自分を思い、背が曲がり悪評を受けるリチャード三世を痛ましく思うのだった。するとリチャード三世の幻(ハリー・ロイド)が現れる(ここはフィリッパの頭の中の会話だよね)。そしてフィリッパは彼を再評価しようと動き出す。

フィリッパが読んだリチャード三世贔屓の本はこれ。https://www.amazon.co.jp/Richard-Third-Paul-Murray-Kendall/dp/0393007855 英語に強い方どうぞ。

そして「リチャード三世協会」に入会するが、そこで「王の墓所はない。遺骨も見つかっていない」という話を聞く。リチャード3世は1485年8月のボズワースの戦いで、ランカスター伯テューダーの軍に殺される。レスターの修道院に埋葬されたが、修道院が取り壊された後、遺骨は川に流されたという話もある。しかしフィリッパはどこかにある筈と探し始める。

15世紀の古地図を手に入れ、今の地図と重ね合わせると、レスターにある駐車場が修道院跡と分かった。フィリッパは発掘したいと願うが費用が出ない。レスター大学に掛け合っても信じて貰えない。彼女はクラウドファンディングで費用を集めて掘り返す。2012年、出てきた遺骨は、レスター大学でDNA鑑定の結果、リチャード三世に間違いないとなった。

その後は、急にレスター大学や、歴史学者が、自分が見つけたかのごとくに振舞うのだった。この辺り、よくありそうなことながら、呆れてしまう。

2015年3月リチャード三世は王族として改めてレスター大聖堂に弔われた。フィリッパには大英帝国勲章が与えられたそうだ。信じて突き進み、それが報われて良かった。


wikiのページがなかなか面白い。ご興味のある方は「リチャード3世」「リチャード3世の発掘と再埋葬」「フィリッパ・ラングリー」等々で検索してみて。

ただね、私はシェイクスピア寄り。なぜなら、兄のエドワード四世の死後、王妃一族を殺し、四世の子つまり甥のエドワード5世とその弟ヨークをロンドン塔に幽閉して殺し、リチャードが王となった歴史は変えようがないと思うから。リチャード三世がこの非道をやらなかったというなら、誰がこの幼い王子たちを幽閉したの?と思う。

それにかつては、王位、王権をめぐる親子、兄弟姉妹、親戚同士の殺し合いなど珍しくもなんともなかった。海外でも日本でも権力争いはあったことだし、今も国によってはあるくらいなんだから。人間の「やらなければやられるかも」との恐怖心、権力欲は怖い。