原作の本のご紹介があり、これはもう私の好みだわとさっそく読み、とても楽しみました。そして映画が来たのですから観ないわけには行きません。

「ザリガニの鳴くところ」


こちらは逮捕劇や主演女優さんの話も。


https://www.zarigani-movie.jp/

湿地で遊んでいた少年たちが、櫓の下に青年の変死体を発見。そのチェイス(ハリス・ディキンソン)は裕福な家の息子で、女性たちにもモテており、婚約もしていた。

事件か、事故か。疑われたのは、湿地に独りで成長してきた「湿地の娘」と呼ばれるカイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。

湿地の一軒家で、酔う度に酷い暴力を振るう夫に耐えかねて、カイアの母親は家を出て行き、姉や兄も、すぐ上の兄ジョシュアも去った。しばらく父娘の2人暮らし。しかし父親も去った。

独り取り残されたカイアは6歳。父母の真似をしてムール貝を掘り、食料雑貨を営む黒人のディキンソン夫妻に買ってもらい、粉などの食料や、船を動かすガソリン、ランプの石油などを手に入れる。それらの上に載ったキャンデーの優しさ。

町の学校に行こうと出かけるが、馬鹿にされて逃げかえる。町を恐れたのか、福祉局が来れば足跡を消して巧みに林に身を隠す。

ある日、出会った少年テイト(テイラー・ジョン・スミス)は、野鳥の羽のやり取りをしたことで、カイアが文字を読めないと知って教え、本を与えた。

カイアは、文字を覚えたことで湿地の動植物の知識を得て観察し、絵を描きためる。同じように生物学の研究を始めたテイトは、カイアの絵の価値を認め、やがて出版を進める。
しかし大学に進学したテイトは、カイアのもとを去り、連絡も途絶えた。

孤独なカイアと出会ったのがチェイス。彼はカイアを誘惑し、結婚を申し込む。しかしカイアは、チェイスが婚約したと知った。暴力でねじ伏せるチェイスにカイアは「近づいたら殺す」と叫び、漁師がそれを聞いていた。

カイアは逮捕され裁判を受ける。彼女を弁護するトム(デヴィッド・ストラザーン)は、かつて彼女に学校に行く道を親切に教え、励ました人だった。

チェイスの母親も町の人も、犯人は「湿地の娘」と決めつける。しかしトムは事件の時間帯は、彼女が湿地の本の2冊目の相談に出版社の人と会うために遠出して一泊していた夜であることなど指摘し、町に暮らしていない「異質な人」への偏見を指摘するのだった。

齢を経て幸せそうなカイアとテイト。カイアが亡くなった後、テイトはカイアが長年抱えてきた秘密を知ります。彼の驚愕の表情…。

厳しい自然の中では、自分に害をなすものを排除するという自然の摂理に生きてきたカイア。カイアの父親、そしてチェイスのふるった暴力への恐怖感。1人で生き、あらゆる問題をたった1人で解決してきた強靭さ。他者への強い不信感の反面、孤独の寂しさを埋めてくれる人を求める心。

カイアを深く愛していたテイトは、カイアの秘密を浜辺にそっと手放す。複雑な思いだったでしょうけれど、つらい時期も幸せな時期もあったカイアの生涯への、テイトの理解と優しさなのでしょう。このシーンは胸を打ちます。

本も映画も良かったです。ただ、映画は事件とラヴストーリーがメインになりますが、本では湿地の動植物についての叙述が多く、カイアの詩まで紹介されているのは、原作者のディーリア・オーウェンズが動物学者だからでしょう。

 

湿地の林も入り組んだ水流をボートで行くシーンも、渡り鳥が来たシーンもとても美しい。ノースカロライナの湿地帯となっていましたが、ロケ地はルイジアナ州ニューオリンズの近くだそうです。バイユー・ソーベージ国立野生動物保護区あたりかな

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ストーリーにあまり関係しない余計なお話2つ。
植物では、湿地帯の林には緑灰色のヒゲ状の植物が、枝からビッシリ垂れ下がっていました。「ここにもサルオガセがあるのね」と思ったら違った。サルオガセモドキ(Tillandsia usneoides)でした。

日本の霧の多い森で時々見られるサルオガセは、地衣類サルオガセ科サルオガセ属です。映画で観たのはサルオガセモドキという名の通り、そっくりですがパイナップル科ハナアナナス属と、全く違う種です。ここに詳しく出ていましたので、植物に興味のある方どうぞ。
https://sambuca.jp/old-mans-beard/

日本でも栽培されてエアプランツとして売っているようですね。この写真では、スパニッシュモスとなっていますが、原産地はスペインではなく、中南米です。



動物では、「ザリガニの鳴くところ」ってどこ? ですよね。

湿地の「茂みの奥深く、生き物が自然の姿で生きてる場所」。映画では母親が「ザリガニが鳴くような、遠いところに行きなさい」と娘に言うセリフがあったような。

それで「ザリガニって鳴くの?」ですが、伊勢海老は年末によく生きているのを頂くので、お正月用に死んでしまわないように温かいお部屋にダンボール箱に入れておく。夜中にガサゴソ動いて、触覚の根元にある発音器をこすり合わせて、ギィとかギギギギという音を立てるので、これが鳴き声のように聞こえます。



でも大きなザリガニのロブスターは、お店では水槽の中なので、鳴き声?は聴けない。アメリカの東海岸に行った時、漁師から買って茹でて、バターソースなどで頂いたのは美味しかったですが鳴き声は記憶になく、子供が小さい頃、有栖川公園の池で捕まえてきたチビのザリガニも良く分かりません。

ちなみに日本のお店のロブスターは空輸されるので、小さな声で「いつも何曜日に入荷するの?」と聞いて、次の日くらいに行くと、アメリカから到着したばかりのロブスターが食べられます。もちろん水槽で飼うので、いつ行っても新鮮ですが。

何と鳴き声のブログがありました。やっぱりこの題には興味を惹かれるのでしょう。
https://sakuyaku.com/what-is-crayfish-sound-novel-2429