青春ものならパスかな?と思いながら、アイルランドの映画は好きだし、ブログ等で良い評価だったので、組み合わせて観ることに。当たり!でした。

「恋人はアンバー」 ★4

https://dating-amber.asmik-ace.co.jp/

何とアイルランドでは、同性愛は1995年まで違法だったとか。
その2年後、田舎町の高校生エディ(フィン・オシェイ)は、ゲイとからかわれ、クラスメイトの前で女性とキス。でも本当はしたくない。

アンバー(ローラ・ペティクルー)から、エディは「あなたはゲイ」とあっさり言われ、「私も一緒」とレズビアンであることを告白される。

そして同級生の差別や偏見をかわし、親に心配をかけないためにも、「卒業まで恋人のフリをしよう」と、アンバーが提案する。

自分でもゲイを認めたくないエディだったが、積極的で活動的なアンバーに巻き込まれて、偽物の恋人に。でも、ありのままの自分でいられる時間に、2人はいろいろな思いを語り合い、友情を育んでいく。

恋人が出来たと喜んだエディの家に招待された時のアンバーの花柄のワンピース姿の、なんと涙ぐましいこと。

エディの父親(バリー・ワード)は軍人で、エディの弟も軍隊に入ると勇ましい。父も望んでいるだろうに「嫌なら止めてもいいんだぞ」と、エディに無理強いはしない。母親(シャロン・ホーガン)は薄々分かっているようだが、さりげなく接している。

アンバーの父は自殺したようだ。母親は「お父さんなら…」「お父さんの望みは…」と自分が言いたい愚痴や願望を言い、アンバーに「お父さんは死んだの」とピシャリと言われる。家族につらい思いをさせただろう父の死に場所を度々そっと訪ねるアンバー。

エディとアンバー2人で出かけたダブリンの街での出会いと体験。それでもエディが入隊しようとするのは、自分がゲイだと認めたくない気持ちに加えて、優しい親だからこそ期待に応えたい気持ちがあるのだろう。

「他人なんて関係ない、あんたの人生よ」というアンバーの言葉は、人生に本気で向き合っているからこそ。

この町を出るために貯めた資金(なんとトレーラーの部屋を恋人に貸し出すという)の重みが、エディの現実的にも精神的にも強い支えになっていくだろうと思いたい。

サラというパートナーを得て、カミングアウトもし、親のためにもこの町に留まろうとするアンバーも、いつかもっともっと自由に羽ばたいて欲しい。

この時代はマイノリティにとても厳しかったのだろう。その中で、まるでコメディのようなやりとりや、苦しみを越えたからこその明るさを感じる少女の強さと、気弱な青年の組み合わせで笑わせながら、胸に迫る。同級生たちも揶揄うだけじゃないし、先生の対応も良い。

LGBTQの人の生きる困難さをテーマにしているが、それだけではない。周りがどう受け止めていくか、あらゆる人の中にあるだろう差別や偏見、そして善意。人が生きる時に一番大切にしなくてはならないものは何かという普遍的な命題を描いていた。

監督や出演者が語る。