東西対立中の1963年、東側つまり鉄のカーテンの向こう側、
チェコの古典的SF映画。モノクロです。


「イカリエ-XB1〈デジタル・リマスター版〉 ★★★☆☆
http://ikarie-jp.com/

2163年、地球から新天地を求めて、地球と似た条件の星、
生命の存在を期待してアルファ・ケンタウリ惑星系を目指す。

イカリエの乗組み員は、男女合わせて40人。    
往復に15年ほど掛かるが、宇宙空間の高速移動のため
乗員は2年ほどしか歳を取らないという。

もうすぐ娘が生まれる副艦長は、残していく妻に言う。
娘が育つところを見たかったと。
妻は、あなたが帰ってきたら、私は年上なのねと。

モノクロームの画面、響く音(宇宙ってホントは無音だよね)
宇宙船は、今現在の科学技術よりも大分進んでいる趣。

女優たちのヘアスタイルやパーティドレスは、
さすがに古典的で制作された時代を偲ばせる。

長い旅路には、夫と妻の話や恋、出産という人間の営みも。
宇宙船との出会い、核兵器、謎の眠り…。

宇宙という未知の空間は、何かあれば…という恐怖を伴う。
イカリエは、目指した星にたどり着けるのか、
その星には、知的生物はいるのだろうか…。

宇宙戦争のような派手なアクションシーンはないが、
どうなるの? という緊迫感が漂い、スリルがある。
SF好きの方には、歴史的にも見逃せない作品かも。


監督はじめスタッフもキャストも、なじみのない名前ばかり。
公式サイトでは、そのためかかなり長い人物紹介がある。
その中には、当時の世界情勢、東西対立の影を感じさせる人生も…。

ベルリンの壁が崩れた時、世界はこれで少しは平和になるかと期待した。
「20世紀は戦争の世紀」と言われていたのだもの。

でもその後のユーゴスラビア連邦解体の紛争、相変わらずのアフリカ、
中東にはイスラエルとパレスチナ紛争だけでなく、
シリアや、ISまで現れて、戦争の悲惨は無くならない。

私の周りの人たちは、ささやかな幸せを願っているのに、
なぜ、国や民族や宗教となると争いが起きるのか。
どこまで人間って愚かで欲張りなのだろう…。