いつも楽しみな新国の研修生の修了公演。
今年は
「イル・カンピエッロ」(小さな広場)。
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/9_011244.html

このオペラはコメディの範疇の軽くて楽しい作品。
18世紀のゴルドーニの戯曲を台本に、
1936年にヴォルフ=フェッラーリが作曲した3幕物。

ベネツィアの広場に面した集合住宅に、ナポリの騎士
アストロフィ(高橋正尚バリトン)がやってくる。

父母を亡くして伯父(清水那由太バス)と暮らす
気位の高いガスパリーナ(宮路江奈ソプラノ)と出会い、
互いに気になる存在に。

ガスパリーナの話すベネツィア語は、「Sの代わりにZ」。
ベネツィアの庶民は「S」に変化中に出来たオペラだとか。

2人は上流社会の共通語トスカーナ語で話すのだが、
それも発音がZ(ツ)になる。イタリア語に堪能なら
そういったところも楽しめるのだろう。

ドナ・カーテ(水野優テノール女性役)の
娘のルシエータ(砂田愛梨ソプラノ)は、
小間物屋のアンゾレート(氷見健一郎バス)に夢中。

ドナ・バスケア(浜松孝行テノール女性役)の
娘のまだ15歳のニエーゼ(吉田美咲子ソプラノ)は、
オルソラ(十合翔子メゾソプラノ)の息子の
ゾルゼート(荏原孝弥テノール)が気になっている。

このオペラ、それぞれに出番があって、学生や研究生の
発表には良さそう。聴衆は比べて楽しめる。

研修生に選ばれた若手なので、みんな上手。
その中でお気に入りの歌手を見つけるのが楽しい。

今回は女性陣のソプラノ、メゾともに声も姿も綺麗だった。

吉田美咲子さんは丁寧に繊細な美しい歌いぶり、

宮路江奈さんは軽妙な味わいを出し、

十合翔子さんはしっかり者の役柄でそれぞれに良かった。

 

中でも、今年の私のお気に入りは砂田愛梨さん。
声の綺麗さだけでなく、強さがあってたっぷり聴かせてくれた。

 

女性役をなさったテノールのお二方、

踊りもお色気?も大サービスで楽しませてくれました。


さて、物語の方は、広場前で起きるドタバタが重なり、
最後は2組の結婚で、めでたしめでたし…でお仕舞い。
指揮柴田真郁、演出粟国淳、衣装も装置も良かった。

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ここから後は公演とは関係なしね。もし4幕があれば、
ガストロフィは、富くじに当たった伯父さんが
ガスパリーナに親切にも持たせた持参金を借金の穴埋めと、
浪費癖であっという間に使い果たすこと間違いなし。

貧困に陥っても、貴族の端くれの体面を保ちたい
ガスパリーナとの2人の夫婦喧嘩は絶えないだろう。

短気ですぐに手が出るアンゾレートは、
「愛しているから殴る」のセリフ通りのDV夫になって、
ルシエータは暴力を受けながら夫から離れられない妻に。

だから4幕があれば2組の夫婦の悲劇間違いなし、
なんてつい思ってしまう登場人物造形でありました。
原作者・台本作家は、もうとっくにお亡くなりですし、
時代としては、こういうことも多かったのかしら。

それと近くの「ブラボーブラビー」オジサン2名が煩くて…。
もう少し余韻を楽しみたい…というところも、
一番先に言いたいらしく「ブラボー」が大声で始まる。
それが楽しみで来ているのかもしれないけれど…
もうちょっと雰囲気を考えてくれないものかしらね。