名画座の最終日に行ったのですが、書くのが遅れてしまいました。
最終目的地 http://
巨匠ジェームズ・アイヴォリー監督さすが! ★★★★☆
微妙なバランスで暮らしていた、奇妙とも言える立場の4人が、
他者の介在で変化していく。その行き付いた先は…。
巨匠の描く見事な人間関係。楽しみました
本で読んでいて、登場人物の不思議さに惹かれたのですが、
あの長編をよくこれだけの作品に美しくまとめ、
南米の奥地という雰囲気がよく出ていて、登場人物たちが素晴らしい。
不思議な立場ながら、それぞれの個性と矜持が感じられて見事。
南米ウルグアイの奥地オチョ・リオス。
高名な亡き作家の妻(ローラ・リニー)と、
作家の愛人(シャルロット・ゲンズブール)と娘、
作家の兄(アンソニー・ホプキンス)、そのゲイの恋人(真田広之)は
広大な敷地に、古い屋敷と別邸があって、そこで暮らしている。
そこに作家の伝記を書きたいという青年オマー(オマー・ラザギ)が現れる。
研究奨励金が必要な彼は、すでに問い合わせて断られていたのに、
4人の遺言執行人から許可を貰えば書けるだろうと恋人に勧められて、
勝手に押しかけてきたのだ。そして、屋敷に泊まり込む。
そして、彼を追いかけて、恋人までがやってくる。
オマーは押しかけておきながら、いろいろ思い惑うのだが、
その恋人は、いかにも合理的ではっきりしたタイプ。
南米の田舎、古びた邸宅での
オマーの都会的な恋人の浮き上がり具合が面白い。
この屋敷では、亡き作家の妻、恋人、兄、そのゲイの青年の4人が、
微妙なバランスを取って、落ち着いて静かに暮らしていたのに、
青年と恋人までがやってきて、人間関係が微妙に変化し始める。
冷たいほどに美しい作家の妻の描く絵が、模写つまり虚偽であるのは、
4人の暮らしの表面的な静けさの下に潜むものを思えば、実に象徴的。
これらの人々の心の動きが丁寧に描かれていく。
アンソニー・ホプキンスをはじめ、名優たちの表情の動きに見とれました。
そして最後に、何年後かの彼らがどうなっているか…。
見事な文芸作品でした。 (私好みだけれど、万人向けではないというところで★4)