モーパッサンの原作。
美しい男が、女性を利用して出世して行く姿を描く。 ★★★☆☆
http://belami-movie.info/


戦争から帰ったジョルジュ(ロバート・パティソン)は、
貧しい暮らしをしていたが、

酒場で戦友フォレスチエと出会う。

新聞社の政治部長のフォレスチエは、
ジョルジュを記者に採用してくれた。

文才の無いジョルジュだが、彼の語る戦争体験を、
フォレスチエ夫人のマドレーヌ(ユマ・サーマン)が

記事に仕立てる。

ジョルジュはマドレーヌの友人の、夫が留守がちの
クロチルド(クリスティーナ・リッチ)を誘惑する。

フォレスチエが結核で死ぬと、ジョルジュはマドレーヌと結婚。
マドレーヌは口述でジョルジュに記事を書かせて、

政治部長に押し上げる。

しかし、ジョルジュは、新聞社主ルセ夫人の
貞淑なヴィルジニ(クリスティン・スコット・トーマス)を誘惑。
女性たちを利用して、出世への階段を上がっていく。

当時の新聞社の様子や、

戦争を利用して金儲けを企む政治家、
女性であるだけで、優れた見識があっても認められないこと

など、 19世紀末のフランス社会を垣間見せる。


衣裳が美しいし、この時代の持てる者に対し、
持たざる者ジョルジュの世に出て行く姿なのだが、

何とも後味が悪い…。

結局はジョルジュに利用されたマドレーヌだが、
彼女は、当時の女性としては珍しく政治に興味を持ち、
しかし、女性だというだけで、

そういった活動は社会的に許されない。

また精神的にも、マドレーヌは妻の地位に縛られることなく、
尊敬するヴォードレック伯爵とは、友人でもあり愛人でもあり、
精神的な師ともする自由な関係を描いている。


この時代の空気を思うと、

マドレーヌの苛立ちは大きかったことと思う。

ところが今も、日本では女性の地位は低いのだ。

主要国では最低レベル。


でもこれは、男性の過酷な働き方の問題もあれば、

専業主婦を望み、 働いても自由な時間を持てる

パートや派遣で良しとする生き方の選択もある。
(シングル・マザーズはまた別の問題として)

私が若い頃、女性も社会に出たいと願った女性たちが、
女性の社会的地位を高めようと、

懸命になっている姿があった。

その先輩の女性たちの真剣さは、

幾分の苦しさをも感じさせていた。

今はもし、望み、努力すれば、

その頃よりラクに地位を得られるだろう。 しかし、

そうした価値観は、変わってしまっているような気がする。

もっと気楽に行こうよ…ということなのか。
過酷な労働は男性だけでいいでしょ…ということなのか。
夫の留守の寂しさを紛らわせていたクロチルドのように?
貞淑に夫を立てているヴィルジニのように?

マドレーヌの苛立ちからはずいぶん遠くに来たようで、

そうでもないのかも…。

映画に出て来た1世紀前の女性たちの生き方から、

今の女性の生き方を、ふと思う。

たぶん、男女を分けて考えるよりも、どういった家庭生活、

どういった働き方が、 多くの人にとっては幸せなのか、

という方向で考える方がいいのかな…と思う。