「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」  ★★★★☆
http://www.uplink.co.jp/kakunokizu/

広島の原爆では14万人の命が奪われている。
原爆直後に、陸軍病院で被曝者の治療に当たった医師が語る。


肥田医師へのインタビュー中心の、ホントに地味なドキュメンタリーだけど、
低線量だから安心…なんて言葉にごまかされないために観ておきたい作品。

フランス人のマーク・プティジャン監督が、フランス語訳された、
肥田医師の著書『広島の消えた日』を読み、映画製作を思い立ったのだそうだ。

95歳になっても、命のある限りと、
放射能の内部被曝、低線量被曝の危険を、事実として語る。

アメリカ軍は、被曝者を人体実験の道具としてしか見ていなかったこと。
被曝者の実態が明らかになったのは、1970年代になってからのこと。
日本政府は、なかなか被曝者救援に動かなかったことも語られる。

2006年に出来た映画だが、低線量被曝の怖さをつくづく感じる。
南太平洋などで原水爆実験をした時代も、全世界的に影響していたのだ。

アメリカでは原発の周囲160キロ圏内の疫学調査で、
乳がんが多発という結果が出ている。

日本でもするべき…と思ったが、54基の原発の160キロ周辺というと、
日本の国土のほとんどが入ってしまうので、調査の対照地域が無くなっちゃう。

福島の事故の後「直ちに危険はない」という言葉が政治家から発せられた。
その通り、直ちに病気には、ほとんどの人はならないかもしれないが…。

しかし現在も、東日本に住む私たちは、毎日、空気・水・食べ物を通して、
低線量の放射能被曝を受けていることは、間違いのない事実。


それでも、再開を願う人がいるのだから、無知は怖い。
今こそ、観るべき作品だと思う。