アンネの追憶   ★★★☆☆
http://www.gocinema.jp/anne/

ナチスに迫害されたユダヤ人少女の書いた『アンネの日記』は、
屋根裏部屋に隠れたアンネ一家が、ナチスによって発見されることによって途切れた。
この映画は、それまでのアンネたちと、それ以降を、実際の話をもとに描く。

 アンネ一家と、ペーター一家をかくまった女性ミープの、
「良心に従う」という言葉が印象的。

アンネは、ホントにごく普通の夢見がちな少女。
このつらい時代、日記を書くことで、つらい日常を乗り越えていたのかもしれない。

父親の「なぜ自分だけが生き残ってしまったのだろう」という思いが痛切。
『アンネの日記』の出版や、その後の彼の生き方が、世に戦争の酷さを伝えた。

ユダヤ人と一括りにされ、黄色い星をつけさせられた人々、
「ユダヤ」という記号化をして、ナチスは凄まじい殺戮をした。

「暴力は生身の人間ではなく、記号に対してふるわれます。

その地に住む人々が集合名詞で名指しされ、

記号的に処理されたとき、すさまじい軍事的破壊が可能になった。」(内田樹)


600万人が、ユダヤ人というだけで殺害された…。

そして障碍者、ロマ人(ジプシー)、ポーランド人、スラヴ人、同性愛者などを含めると。

900万~1100万人という。ホロコーストのすさまじさ。

ヨーロッパでは、こうしたことを繰り返さないために、
記録としても、ナチスの迫害に関する映画や出版は、意識してされている。
それはとても大事なことだと思う。

ただ、迫害されたユダヤ人たちは戦後、パレスチナに安住の地を得、
イスラエル国家をつくったのですよね。

そして、その時から、長い間、先祖代々住んでいたパレスチナの地を追われた、
アラブ系の人々の苦難の歴史が始まった。

どうして、自分たちがされて、ここまで苦しんだことを、その人たち、そして子孫たちは、
平気でパレスチナ人にしている…。

これらユダヤ人の苦難を描いたいくつもの映画は、そういったことを、
何一つ言及しないことを、どうしても、付け加えておきたくなる。

もちろん、時代は違うし、完成した映画でそれは言えないのかもしれない。、
しかし、イスラエルのユダヤ人自らが、
パレスチナの苦難を描く映画をつくる日は、いつになったら来るのか…。

イスラエルのユダヤ人が、自分たちが受けた苦しみと同様の苦しみを、
パレスチナ人に与えることを止める日は、いつ来るのだろうか…。