南山堂医学大辞典第20版によれば、閾値(いきち、もしくは、しきいち)とは、
生理学や薬学で使われる作用因子の量の概念で、作用因子(生理的刺激因子や薬物)により生体に引き起こされる特定の反応(影響)について、反応の有無の境目(閾)となる作用因子量のこと。
因みに、「閾」の音読みは「いき」、訓読みは「しきい」です。
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「調べたい物を人為的に増幅して、ターゲットの有無を検査しているのであって、ターゲットが閾値を超えているのか否かを検査している訳じゃないのかよ。何だか、儲ける気、満々じゃん。」
大変、下卑た言い回しですが、今春、PCR(Polymerase Chain Reaction)という技術を使った検査の存在を知り、それがどのような技術で、いつ頃誰によって開発された技術なのかなどを、素人なりに調べてみて、思わず心の中で、そう呟いてしまいました。
もちろん、「何だか、儲ける気、満々じゃん」は、PCRという技術を使った検査が、あたかも、現在流行中の感染症に感染しているか否かを判定する、精度の高い検査であるかの如く喧伝することにより儲けようとする者に対する呟きであって、PCRという技術そのものに対する呟きではありません。
因みに、PCRという技術を開発し、その功績により、1993年にノーベル化学賞を受賞されたキャリー・マリス氏は、昨年の夏に、鬼籍に入られていますが、ノーベル賞のウェブサイトには、「PCRは、医学研究(medical research)や、科学捜査に関わる学問領域、法科学(forensic science)において、きわめて重要です」と、記されています。
また、オックスフォード大学のCEBM(the Centre for Evidence-Based Medicine)のウェブサイトでは、PCRという技術によって微量のRNAでも検出できることの有用性に言及しつつ、「PCRテストで陽性なら、感染しているのか」という題の考察が、掲載されています。再び、南山堂医学大辞典によれば、感染(infection)とは、
「病原体が生体内に侵入、定着、増殖し、生体に何らかの病的変化を与えること」だそうです。
マリス氏が、もしも、ご存命であられたら、現在の状況を見て、驚かれるのではないでしょうか。皆さんは、どのように思われますでしょうか。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則