「火事と喧嘩は江戸の華」と言われた江戸の町。1657年3月(新暦)、明暦の大火。1923年9月、関東大震災。1945年3月、東京大空襲。人災、天災を問わず、幾多の災害を乗り越えてきた街、東京。そんな東京の墨田区の隅田川東岸沿いには、回向院や国技館、旧安田庭園などがございますが、東京都慰霊堂もございます。
この東京都慰霊堂は、公益財団法人東京都慰霊協会のウェブサイトによりますと、関東大震災による遭難者、約58,000人の御遺骨を納めるための霊堂として、1930(昭和5)年に、建てられたものだそうです。建立当初は、「震災記念堂」と名付けられ、東京大空襲などによる犠牲者、約105,000人の御遺骨も併せて奉安し、「東京都慰霊堂」と改称されたそうです。
我が国は、自由を尊ぶ国ですので、どの場所で、慰霊をしようと自由です。心の中だけで慰霊をするのも、それを形に表すのも自由ですし、慰霊をするしないも、自由です。四肢に麻痺があり外出できず、手を合わせることもできず、心の中だけで慰霊をするのも、慰霊です。慰霊をすることは、心の問題であり、そこに優劣はございません。もちろん、これは、私人や私的な組織についての話です。公人や公的な組織の場合は、話が違います。
東京大空襲などによる犠牲者のための慰霊大法要が、明日、3月10日に、東京都慰霊堂で執り行われるそうです。また、毎年8月6日には、広島県中区にございます平和記念公園で、平和記念式典が執り行われます。これらが、それぞれ、東京都以外の地で、広島県以外の地で、執り行われたら、ほとんどの方が、変だと感じられるでしょう。
毎年、同じことを申し上げて、申し訳ございません。明後日、3月11日に、東日本大震災の追悼式が今年も変わらず、甚大な災害を受けた、東日本の三県以外の地で、両陛下の御臨席の下、執り行われるそうです。ご高齢の両陛下は、この1月に長旅をされ、フィリピンをご訪問なさいました。両陛下がどのようなお気持ちで、吹上御苑から目と鼻の先にある国立劇場に向かわれるのか。政官を問わず、政府の要職にある者は、今一度、よく考えていただきたい。今年も、僕は、そう思っています。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則