たかが言葉、されど言葉。向かい合って会話などをする際は、非言語的なやりとり(nonverbal communication)のほうが、言語そのものよりも、物を言うそうですが、言語の、時を越え空間を越える伝播性を考えれば、慎重に言葉を選ぶことは、とても大切なことだと思います。
僕は、現在は、テレビ受像機を全て手放し一台も持っていないので、最近のテレビ放送の内容に疎いのですが、テレビを含むマスコミの多くは、発信する情報の合間に挿入される広告による収入に支えられているため、閲覧する者の注意を引きやすい言葉を使いがちです。
サッチャーリズム(Thatcherism)やレーガノミクス(Reaganomics)という変な言葉は、もちろん、マスコミの造語(coined term)です。マーガレット・サッチャー氏やロナルド・レーガン氏が、生前、そのような言葉を真顔で使っているのを見聞きしたことがある人は、居られないのではないでしょうか。これらの言葉は、商業広告でよくある「○○製法で、コクがさらにアップ」という謳い文句における「○○製法」と、ほぼ同じです。○○の部分には、もちろん、広告主である企業が創作した造語が入ります。
もしも、マスコミではなく政治家ご本人が、何の疑いも感じず、本人の苗字を組み入れた造語を作り、(よくある苗字であり、かつ、僕の苗字である佐藤を例として使いますが、)「佐藤経済を推し進め、我が国を再生させる」だとか、「佐藤公的医療保険を導入し、国民皆保険を実現させる」だとか、「佐藤主義で、我が国を大国病から回復させる」などと、得意満面の表情で言い出したら、確実に噴飯ものでしょう。
「巧言令色鮮(すく)なし仁」という言葉もあるそうですが、公職にある方は、是非、母国語を大切にし、慎重に言葉を選んでいただきたいです。蛇足ながら、エコノミクスという言葉は、和語でも漢語でもなく、外来の言葉です。
大天守登閣再開まであと30日の日に、兵庫県姫路市にて
佐藤 政則