「安定供給」のために、いわゆる総括原価方式が採用されているからといって、何でもかんでも原価に含めるというのは、如何なものでしょうか。
電力会社が支払う「借入金に対する利息」だけでなく配当も、原価に含めて、電気料金が算定されているそうです。電力会社の株主にとって、電力会社は、「金のなる木」と呼びたくなるくらいの優良投資先なのかもしれません。
保有する資産や経費が増えれば増えるほど、利益が増えるので、経費削減ではなく経費増額を促している。そう言われることが多い、総括原価方式。
東京電力株式会社は、上記のリンク先において、「総括原価方式は、鉄道、水道、ガスなどのインフラを担う公益事業においても、幅広く採用されています」と述べておられますが、鉄道の赤字路線は、どんどん縮小、廃止されてきましたし、今も、その傾向に歯止めがかかりません。東電と同じぐらい、保有資産を増やすことに余念のない鉄道事業者など、この国に存在しますでしょうか。
東電は、このファイルの3頁(PDFファイル上の4頁)の下部で、「発電所、送電線、変電所等の設備は、その建設に関して、電気事業法第29条に基づく供給計画を毎年策定し、経済産業大臣に届け出ることになっており、不要・過剰な設備を建設することはできない仕組みとなっています」とも、述べておられます。反応する気力を失せさせるほどの説明、弁明。凡人にはできかねることだと、思います。
総括原価方式。浜岡原発の高さ14-16mの防波壁。そして、被災県で進められている防潮堤の整備。仮に、巨大な防潮堤を、我が国の太平洋側沿岸に隙間なく建設し、津波襲来時、一箇所も決壊しなければ、どうなるか。
津波は巨大な防潮堤にぶつかり、重力に抗せる限り、上方向にも逃げようとするので、過去最大級の津波の高さとほぼ同じ高さの防潮堤を建設しても、津波の浸入を防ぐことができるとは限らない。そして、巨大な防潮堤を越えて浸入した海水は、陸側に溜まっていき、電気の供給が停まれば、排水用の弁を設置していたとしても、誰も弁を開けることができなくなる。
巨大な防潮堤を隙間なく建設し、一箇所でも決壊した場合は、どうなるか。巨大な防潮堤を人口密集地の沿岸にのみ建設した場合は、どうなるか。などなど、色んな状況を考えてみたのですが、「巨額の公金を投入して、巨大な防潮堤を建設する」ことに意義があるとは、到底思えません。皆さんは、巨大な防潮堤の整備を、どう思われますでしょうか。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則