人類社会の有り様を研究する学問、社会学に、ゲマインシャフト、ゲゼルシャフトという用語があります。
国語辞典を開いてみると、ゲマインシャフトは、「主に、地縁や血縁によって、自然的、有機的に形成された社会集団。共同社会」、そして、ゲゼルシャフトは、「特定の目的や共通の利益のために作為的に形成された社会集団。利益社会」と、説明されています。
近代国家は、大勢の赤の他人が、一つの法体系の下で、袖振り合って暮らし、たとえ、極悪非道な振る舞いをする者がいて害を被っても、極悪人に対し、私的に制裁を加えるのではなく、公的な機関が、法に則り正当な手続き(due process)をした上で、極悪人を処する社会です。
一つの法体系の下に、より多くの人が結集することにより、規模の経済(economies of scale)を追求することができ、「より豊かで安心して暮らせる社会」を実現し、維持する。近代国家は、そういう共通の利益のために作為的に形成された集団なので、ゲマインシャフトではなく、ゲゼルシャフトでしょう。
近代国家は、大勢の赤の他人によって、構成されています。やはり、お金がものを言う社会(=society where money talks)です。財政が逼迫すれば、社会保障、教育、社会資本整備、地域振興、産業政策、外交、国防などなど、ありとあらゆる分野における政策は、負の影響を受け、どんどん国力が低下し、国民の生活は不安定になります。その結果、国民は、なお経済的に豊かであったとしても、安心して暮らしていくことが困難になり、気持ちが落ち着かず、不安が募るばかりで、精神的に漂い流され、追い込まれていきます。
1975(昭和50)年度以降、今に至るまでずっと、私たちは、ひたすら、財政法4条1項をないがしろにして参りました。ないがしろにして赤字国債を乱発し、その償還日(=返済日)がめぐってきたら、今度は借換国債(特別会計に関する法律46条1項)を乱発する。そうやって、将来の世代に対し、膨大な額のつけをまわしながら、自らの豊かさを追い求めて参りました。
誰が、覚醒剤などの薬物に手を出し依存するに至った芸能人を、嘲(あざけ)り笑えるでしょうか。赤字国債に手を出し依存するに至った我が国の政府。国債や借入金に対する利払費として、毎月、1兆円以上支払い続けています。単純に割り算をすれば、「一人当たり、毎月約8,740円」です。財政赤字の膨張は、喫緊の問題です。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則