放射性廃棄物の無害化技術を得ていない人類の、立ち位置 | 佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

変わらぬ理念の実現を目指し、しくみを修正する。
実態に合わなくなった諸制度を見直し、日本国を良くすることを目指す、政治ブログです。

 国策会社という言葉がある。国策とは、「国家の政策」を指す語に過ぎないが、大辞泉によれば、「主に満州事変後、第二次世界大戦終了までに、国策を推進するために設立された半官半民の会社」を、特に国策会社と呼ぶため、現在では、あまり聞かない言葉である。

 そういう国策会社の一つに、日本発送電株式会社と呼ばれる会社があった。戦時体制を強化するために、既存の民間電力会社を合併するなどして、1939(昭和14)年4月に設立された国策会社である。
こうして、発送電を一元化し、同時に、全国を九つの区域に分け、九つの配電会社が設立された。現在の10電力会社体制(東から、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、四国、中国、九州、沖縄電力)の原形である。

 現在、沖縄電力を除く九つの電力会社と、日本原子力発電株式会社(筆頭株主は東京電力)が、商用の原子力発電所を運営している。この、原子力の平和利用は、1955(昭和30)年の年末に公布された原子力基本法に基づくもので、原子力発電事業は、国策中の国策である
更に言えば、原子力発電事業は、国策でなけれな成立し得ない事業である。商用発電の開始までに、膨大な額の研究開発費がかかったから、そう申し上げているのではない。

 原子力に限らず、多くの先端技術の進歩は、戦争の遂行と無縁でないが、人類は、戦争に勝つために、原子核分裂などに伴って放出される多量のエネルギーを利用する技術を開発した。が、同時に放出される放射性廃棄物を無害化する技術を得ていない。
詳しいことはよく分からないが、この国は、国策として、放射性廃棄物をガラスかなんかでガチガチに固めて、地面に穴ぼこを掘って埋めようとしているが、それさえ、計画を練っている段階で、何万年埋めれば無害化が完了するのか、判然としない。

 無害化が完了するまでの数万年間、放射性廃棄物を管理し続ける費用は、一体誰が払うのか。だから、原子力発電事業は、国策でなければ成立し得ない事業である。そもそも、埋めた後はほったらかしで、数万年の間に、その地層で地震やテロが起きた場合、誰も責任を取らないのだろうか。

 放射性廃棄物を無害化する技術を得ていない人類に、原子核分裂などに伴って放出される多量のエネルギーを利用する大義名分など、あるだろうか。


神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則