賃金支払い5原則に相違する退職金制度と、渡る官僚 | 佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

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実態に合わなくなった諸制度を見直し、日本国を良くすることを目指す、政治ブログです。


労働基準法24条1項
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
同法24条2項
賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
(第1項、第2項、共に、但し書きを省略しました)



 労働基準法24条1項と2項で述べられていること、つまり、
1. 賃金を、通貨で
2. 直接、労働者に
3. その全額一括で
4. 毎月一回以上
5. 一定の期日に

支払うことは、まとめて、賃金支払いの5原則と呼ばれている。

 いわゆる退職金は、この原則に著しく相違するものである。退職金が労働の対価であるのなら、労働者が労働を提供する毎に、毎月一回以上の頻度で、その全額を分割せずに、支払い続けなければならない。が、退職金は、条件を定めて条件に該当した者にだけ、退職後に一括で、もしくは、退職後に分割して、支払われる。

 退職金が労働の対価でなく贈り物とするならば、ある一定額以上の退職金は、不適切な利益供与以外の何物でもない。因みに、退職金は、所得税法において、給与所得ではなく退職所得として分類され、所得控除額などの面で、大変、優遇されている。

 「退職金は、一生に一度、受け取るものなんだから、優遇されて当然」と、今、大半の方が思われたと思われるが、利に敏(さと)い、一部の官僚は、天下りをした後、渡り鳥よろしく、同様の団体や企業を転々とし、転々とする度に、巨額の退職金を受領し、退職所得という優遇措置を、一生に何度も活用する。

 抜け目ないこと、この上ない。内閣が提出する法律案、いわゆる閣法の条文は全て、官僚が絶対に損をしないように作文されていると、私は思っている。

 この国では、知事や市町村長など、そもそも任期が定められている者にまで、退職金が支払われるそうだし、それらの者が任期の途中にぷいっと辞めても、変わらず、支払われるそうだ。
退職金って何だろう。考えれば考えるほど、不思議な慣習である。


神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則