労働基準法から分離、独立した最低賃金法に基づく地域別最低賃金が、今年度も、間もなく改定される。
日本国内の最低賃金が、47ある都道府県ごとに異なり揃っていないことや、47ある都道府県ごとに、毎年度、型通り、最低賃金審議会が開催され、その予算が消化されることは、甚だ、問題であると、私は思っている。が、今回、書かせていただきたい最低賃金は、日本国内の最低賃金ではなく、世界各国の最低賃金である。
戦後、自由貿易を推進するために、GATT(関税と貿易に関する総合的な協定)、WTO(世界貿易機関)、TPP(太平洋越しの協力関係)など、様々な枠組みの中で、関税に関する交渉が行われてきた。
しかし、常に、各国間の最低賃金格差の是正が語られないまま、関税の引き下げ、撤廃が議論されてきたように、思う。
「自由貿易体制の下、低廉な最低賃金を武器にして、経済成長を実現すれば、変動相場制が機能し、早晩、各国間の最低賃金格差は是正される」というのは、まやかしである。日本の事例は、例外である。
中国が「世界の工場」になるということは、円に換算すれば100円台前半である上海市の最低賃金によって、先進国の多くの労働者の給与が、猛烈な下げ圧力を受け続けるということである。
全てがそうであるとは言わないが、「低廉な賃金で働く民工と呼ばれる出稼ぎ労働者を囲い込むことにより、富裕層が誕生した」という構図が、中国にある。
各国の最低賃金が不揃いのまま自由貿易を推進し、一体、どの国の労働者が幸せになるのか。TPPの推進を望んでいるのは、更なるシェア拡大を望む、各貿易産品の最大手企業である。それらの企業の口車に、乗ってはならない。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則