1952年4月に、サンフランシスコ条約が発効し、部分的に制限されていた、この国の国家主権が、回復した。原子力基本法が成立したのは、その3年半後の1955年12月である。
原子力の研究、開発及び利用の推進は、国の政策、国策である。民間企業が、自由競争の中で意思決定を行い、原子力発電という事業を推進してきた訳ではない。
あれから約57年、一体、どれだけの公金(= 皆が納めた税金)が、原発推進のために、投入されてきたのだろうか。
過日、「政府が公表した試算によると、原発をゼロにすれば、電気料金が2倍になる」という報道があったように思い、政府が公表した試算が掲載されている文献を、ネット上で探したが、何も見つからない。
(余談だが、あっちこっち探していたら、設置する根拠を定めた法律がないのに設置された、国家戦略室という組織が、まだ残存していることを知り、驚いた。「内閣総理大臣の頭の中に国家戦略がない」という非常事態を想定して、設置したのだろうか。)
原発という国策を推進したのは、通産省(現・経産省)である。原発という国策が誤りであるのなら、原発に関わる全ての施設だけを国有化し、火力、水力などの発電所から切り離すべきである。
もしも、経営不振の総合家電メーカーが、「赤字のテレビ事業から撤退するので、白物家電を倍に値上げします」と発表したら、どうなるだろう。
原子力の研究開発から始まり、原子炉の廃炉、放射性廃棄物の地層処分までを考慮に入れて、原発の発電原価を精査し、他の発電の発電原価と、比較するべきである。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則