上場会社の、1億円以上の報酬等を受け取っている役員についての個別情報開示が、義務付けられてから、やれ、日産の誰それはいくらだ、やれ、ソニーの誰それはいくらだということが、報じられるようになった。多過ぎるのでは、という論調の記事が多い。年額8億円、9億円という金額は、確かに少ない金額ではない。
世の中、世間というものは広い。その全体を子細に眺めてみても、8億円、9億円というのは、やはり、突出した金額だろうか。
1か月ほど前にも触れさせていただいたが、株式会社ファーストリテイリングの2012年8月期の中間配当は、一株当たり130円で、筆頭株主である柳井正氏の持株数は、22,987,284株だそうである。
単純に掛け算をすれば、2,988,346,920円である。2012年5月14日が、中間配当の支払い開始日とのことなので、この約30億円は、既に受領されたのだろうか。上記の8億円や9億円と違い、あまり、いや、ほとんど報じられていないようなので、詳しいことは分からない。
所得の金額という個人の情報を、いくつか書かせていただいたのは、その個人を槍玉に挙げるためではなく、所得税の税率に注目していただくためなので、お許しいただきたい。
日本の所得税法では、所得を10種類に分類している。基本は、総合課税なので、年間の所得を合算して、控除(=引き算)すべきものを控除した後、税率を掛ける。所得が約30億円の場合、所得税率は約40%のはずである。常にそうであって欲しい。が、願いは叶わない。
上場株式等の配当等の所得の場合、所得税率 7%(他に地方税3%)で源泉徴収される。そして、分離課税を選択し納税を完結させることができるそうである。上場会社から、配当として約30億円を受領した人は、分離課税を選ぶだろう。
所得税の税収は、益々、減ってゆく。
東京都千代田区にて
佐藤 政則