業務上の被曝、医療上の被曝、健康診断での被曝 | 佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

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 大地震、大津波、原発事故によって、多くの方々が亡くなられた。そして、被曝線量が増加したことにより、今後の長い期間において、結果的に多くの方々が、さらに亡くなられる。既に、がん(=悪性新生物)は、統計上(*)、日本人の死亡原因の第一位であるが、それが、強化される。
ただちに影響はない」とは、そういうことである。

 労働省(当時)本省の労働基準局長が、各都道府県労働基準局長に宛てた文書で、「電離放射線に係る疾病の業務上外の認定基準について」(昭和51年11月8日、基発810号、1から6ページへ7から11ページへ)という題名の文書が、ある。いわゆる通達である。通達とは、公務員の世界において、上司が部下に宛てて出す、個別具体的な業務のマニュアルのことである。

 電離放射線にさらされる業務を行う労働者が、「急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害、白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫」に、罹患した場合に、その病が、業務上の疾病に該当するのか否か、つまり、労災に当たるのか否かを、判断する際の基準が書かれている文書である。

 この文書の中に、私が、過日、触れた「労働安全衛生法に基づく健康診断に含まれる胸部エックス線検査」に、言及している部分があるので、少々長いが、引用させていただく。

白血病を起こす誘因としては、電離放射線被ばくが唯一のものではない。また、白血病の発生が電離放射線被ばくと関連があると考えられる症例においても、業務による電離放射線被ばく線量に医療上の電離放射線被ばく線量等の業務以外の被ばく線量が加わって発生することが多い。このような場合には、業務による電離放射線被ばく線量が前記(1)の式で示される値(=0.5レム/年)に比較的近いものでこれを下回るときは、医療上の被ばく線量を加えて前記(1)で示される値(=0.5レム/年)に該当するか否かを考慮する必要がある。この場合、労働安全衛生法等の法令により事業者に対し義務づけられた労働者の健康診断を実施したために被ばくしたエックス線のような電離放射線の被ばく線量は、業務起因性の判断を行うに際しては業務上の被ばく線量として取り扱う。

 電離放射線にさらされる業務を行う労働者が白血病に罹患し、労災か否かを検討する際は、業務上の被曝線量と、医療上の被曝線量と、定期健康診断での被曝線量を足し算して、検討がなされる。

 「ただちに影響はない」とは、そういうことである。


神奈川県鎌倉市にて
佐藤 政則



(*)
厚生労働省発表の平成21年度人口動態統計月報年計より。これをクリック後、図5を参照してください