近年の米国大統領経験者の多くは、元州知事である。ジミー・カーター氏はジョージア州の、ロナルド・レーガン氏はカリフォルニア州の、ビル・クリントン氏はアーカンソー州の、ジョージ・W・ブッシュ氏はテキサス州の、元知事である。
米国の連邦政府は、米国憲法で規定された権限のみを有し、それ以外の権限のうち、米国憲法で禁止されていないものは、各州政府が有している(注)。各州は、独自の憲法と法律を有している。なので、州知事として実績を残している人が、大統領に選ばれることは、なんら不思議なことではない。
日本において、都道府県市町村と特別区は、地方公共団体と呼ばれ、たとえば、"鳥取県政府"とは呼ばれない。各都道府県は、独自の憲法と法律を有しているわけではなく、法律の範囲内で条例を制定するだけなので、政府とは呼ばない。地方自治体とは、基本的には、町内会を拡大したものである。
「○○から日本を変える(○○には地名が入る)」と声を張り上げる、地方公共団体の長がおられる。一人や二人ではない。何をおっしゃっているのか、全く分からない。地方公共団体は、中央省庁の下級官庁ではないし、もちろん中央省庁の出先機関でもない。
現行の法律を変更するという最もしんどい仕事をせずに日本を変える、そんな魔法のような技術をお持ちなら、もったいぶったりせずに、一刻も早く、その技術を国民のために使っていただきたい。
政治用語としての"自治"は、どうも「許可された範囲内で、ほんの少しだけ自ら治める」という意味らしい。少なくとも、学生自治や地方自治の"自治"は、そういう意味である。
(注)
U.S. Constitution/Amendment 10
The powers not delegated to the United States by the Constitution, nor prohibited by it to the States, are reserved to the States respectively, or to the people.
米国憲法/修正10条
この憲法が米国(の連邦政府)に委任していなくて、かつ、州に対して禁止していない権限は、各々の州または国民に留保される。