6年前…
アトピー性皮膚炎のS君が入園してきました。
全身に湿疹があり一日中痒みとの戦い。
痒みが止まらず…
我慢できず…
掻いて全身血だらけ…
顔以外包帯で覆った状態のときも…
『痒いよ~』『痛いよ~』と泣くこと毎日。

ステロイドを使わない方針のお母様。

正直、園生活は難しいのではないか…と思いました。

血だらけの体をガーゼと包帯で覆ってあげているときのS君の顔…今でも忘れられません。

園では
S君の場合は保湿剤を臨機応変に数回塗布していましたが保湿剤だけでは痒みは治まらず…
濡れタオルで冷やしたり
S君の気持ちに寄り添うように
抱き締めてなだめたり
掻くとフケのように粉状になって飛んでしまうため
時には給食は事務所で私と食べたり…

嫌なことがあったり緊張する場面になると
急に掻き出してヒステリックになり血だらけになることも…
物事に集中することもできません。

だんだん成長してくると、本当に痒くなくても甘えからわざと泣いて掻き出すことも出てきました。
私と担任だけは、わざと掻いている様子がわかるようになり、時には叱ったりわざとある程度掻くことを止めさせずに様子をみることもありました。
すると、ご家庭でも同様のことがあり同様の対応をしていたそうです。

そのようなときに叱ったりすることは可愛そうなことのように思われるかもしれませんが、掻いて血だらけになってしまうことを止めさせることがS君のためでした。
S君の気持ちを私たちはわかっているんだと伝え続けました。

皮膚の状態だけでなく精神的な部分についてもお母様と連絡を密に取り合い、家庭と園と同じ対応をとるようにしました。

そのうち、泣き叫びながら掻きむしって誰の言葉も聞き入れない状態でも私のところに連れてこられるだけで治まることもありました。
『マズイ』と思うのか!? 安心するのか!?


年少からの3年間。
毎日のようにS君の対応をし
何度もお母様と面談をし
お母様の治療方針も全面的に理解するように
でも時にはステロイドを使用する必要性をお伝えたりもしました。
お互いに一番良い対応は?と常に考えていました。
結局はお母様も私たちも向かっている方向は一緒。

S君に早く良くなってもらいたい!
笑って穏やかに生活できる時間を増やしてあげたい!

ただただ その思いでいっぱいでした。

少しずつ…少しずつ…
肌の状態も良くなってきて…
痒みも治まってきて…

だいぶ良い状態になり卒園しました!

今でも園の行事に遊びに来てくれます♪
今ではすっかり落ち着いた状態です。

小学校では保育園と同様の対応は難しいと思います。
手をかけてあげられる時期に少しでも良い状態にしてあげることが必要だと思います。

S君のお陰で、私は色々なことを経験し学びました。
S君のお陰で、今のわが園での対応があります。


つづく…


保育園看護師
nao♪