『初恋初雪』⑤ ~あさぎクンの紙飛行機。 | 雨の降る日も晴れた日も

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日々の感じた事を綴ります。



こうして三者三様の恋のお話は終わり、イヴの夜は更けていきます。

かわいい「女子会」もこれにてお開き。

また来年もこうして会って、恋のお話の続きをする約束をして・・・。


やよいちゃんは、コースケ君が待っている、と家の人から「おとぎの国」に電話が入ります。

スミたんは、焼き芋を買ってきたから電車の中で食べよう、とユウくんが「おとぎの国」まで迎えに来ました。

そしてあさぎクンは・・・。


送って行こうか?と心配してくれる「おとぎの国」のおじさんに、

「ううん いいの」

「そこの角まがったTELボックスで彼がまっててくれるから」

と断り、おじさんにクリスマスの挨拶をして独りで「おとぎの国」をあとにします。



「神サマはそんなにいじわるではあるまい」

「あんなにいいコだもの きっと…」

と、あさぎクンを見送ったおじさんの独りごと。




角のTELボックスでは一平くんとは似ても似つかぬ人が電話中。

(そういえば電話ボックスって見かけなくなりましたね)

(昭和は遠くなりにけり・・・)



公園のベンチに座って、あさぎクンはみんなに伝えられなかった「本当の恋のお話」を始めます。




飛ばしたはずの紙飛行機をコートの内ポケットから出して。



ごめんね みんな ごめんね

しばしココで反省します


うちの大学にフォーク部はないのです

だから一平くんにもまだであってないの


みんなのおはなしがとってもステキで

ほんのちょっぴりうらやましくって ウソついちゃった



でもきっと来年 ごめんなさいっていうわ

いまより もうすこしおとなになって




なんと、あの壮大な(?)恋のお話はすべてあさぎクンが脳内で拵えたお話だったのです。


いや~~~。

恐るべし、乙女の妄想力!!!


でも分かります。

女の子にとって素敵な「恋」のお話があるかないかというのは、とても重要なことですから。


もう少し「薹が立って」くると重要なことが変ってきますけどね(笑)。

「美への執着」とか「お金」とか「健康」とか「老後」とか、とか、とか・・・。

(汚れっちまうんですねェ・・・ため息)





降りしきる雪の中。


この雪がみんな流れ星ならいっぱい願いごとがかけられるのに

いっぱい…


ううん

お願いはひとつだけ

一平くんにもういちどあわせて……


ほんとにステキな恋のお話

できるように…


そうよ 

さびしくなんかないわ

いつかきっと

めぐりあえるもの





くう~~~~~っ!!

泣けますねっ!!


私なら「この雪がみんないちまんえんさつなら・・・うへへへへ♪」

って思っちゃいそうですけどねっ!!


少しツッコミを入れさせてもらうと、もういちど一平くんに会っても「ステキな恋のお話」になるとは限らないじゃありませんか。

(って、そうとうヤな性格してるな、私も)



雪の中。

紙飛行機を折って飛ばしては拾い、飛ばしては拾い・・・。

届かない想いを誰に向けて飛ばしているのでしょう?

一平くん?

それとも神サマ?




あさぎクンは幻を見ます。

それは神サマからの切ないクリスマスプレゼント?





ここまで とぶかい

ここまで とぶかい




でも所詮幻は幻。

ふと我に返ったあさぎクンの目の前には、ただ降りしきる雪とクリスマスの夜の闇。

サワサワサワ・・・。

木の枝を揺らす風の音。







※記事中の写真と青字部分は桂むつみさん『月のひとしずく』(集英社)より抜粋いたしました。