こうして三者三様の恋のお話は終わり、イヴの夜は更けていきます。
かわいい「女子会」もこれにてお開き。
また来年もこうして会って、恋のお話の続きをする約束をして・・・。
やよいちゃんは、コースケ君が待っている、と家の人から「おとぎの国」に電話が入ります。
スミたんは、焼き芋を買ってきたから電車の中で食べよう、とユウくんが「おとぎの国」まで迎えに来ました。
そしてあさぎクンは・・・。
送って行こうか?と心配してくれる「おとぎの国」のおじさんに、
「ううん いいの」
「そこの角まがったTELボックスで彼がまっててくれるから」
と断り、おじさんにクリスマスの挨拶をして独りで「おとぎの国」をあとにします。
「神サマはそんなにいじわるではあるまい」
「あんなにいいコだもの きっと…」
と、あさぎクンを見送ったおじさんの独りごと。
角のTELボックスでは一平くんとは似ても似つかぬ人が電話中。
(そういえば電話ボックスって見かけなくなりましたね)
(昭和は遠くなりにけり・・・)
公園のベンチに座って、あさぎクンはみんなに伝えられなかった「本当の恋のお話」を始めます。

飛ばしたはずの紙飛行機をコートの内ポケットから出して。
ごめんね みんな ごめんね
しばしココで反省します
うちの大学にフォーク部はないのです
だから一平くんにもまだであってないの
みんなのおはなしがとってもステキで
ほんのちょっぴりうらやましくって ウソついちゃった
でもきっと来年 ごめんなさいっていうわ
いまより もうすこしおとなになって
なんと、あの壮大な(?)恋のお話はすべてあさぎクンが脳内で拵えたお話だったのです。
いや~~~。
恐るべし、乙女の妄想力!!!
でも分かります。
女の子にとって素敵な「恋」のお話があるかないかというのは、とても重要なことですから。
もう少し「薹が立って」くると重要なことが変ってきますけどね(笑)。
「美への執着」とか「お金」とか「健康」とか「老後」とか、とか、とか・・・。
(汚れっちまうんですねェ・・・ため息)
降りしきる雪の中。
この雪がみんな流れ星ならいっぱい願いごとがかけられるのに
いっぱい…
ううん
お願いはひとつだけ
一平くんにもういちどあわせて……
ほんとにステキな恋のお話
できるように…
そうよ
さびしくなんかないわ
いつかきっと
めぐりあえるもの
くう~~~~~っ!!
泣けますねっ!!
私なら「この雪がみんないちまんえんさつなら・・・うへへへへ♪」
って思っちゃいそうですけどねっ!!
少しツッコミを入れさせてもらうと、もういちど一平くんに会っても「ステキな恋のお話」になるとは限らないじゃありませんか。
(って、そうとうヤな性格してるな、私も)
雪の中。
紙飛行機を折って飛ばしては拾い、飛ばしては拾い・・・。
届かない想いを誰に向けて飛ばしているのでしょう?
一平くん?
それとも神サマ?
あさぎクンは幻を見ます。
それは神サマからの切ないクリスマスプレゼント?

ここまで とぶかい
ここまで とぶかい
でも所詮幻は幻。
ふと我に返ったあさぎクンの目の前には、ただ降りしきる雪とクリスマスの夜の闇。
サワサワサワ・・・。
木の枝を揺らす風の音。
※記事中の写真と青字部分は桂むつみさん『月のひとしずく』(集英社)より抜粋いたしました。