高知県香美市 依光晃一郎市長に対し、教育に独断的な介入をすることなく、教育委員会や市民の声を尊重することを求めます。

1.前代未聞の教育長不在
 市長は、教育委員全員連名の要望書を無視し、議会への事前説明や協議のないままに教育長交代の人事案を押し進め、前代未聞の教育長不在という異常事態を招いた。

2.一方的な奨学金の廃止
 80名あまりが受給していた「香美市高等学校等奨学金」を、年度途中に一方的に廃止。受給者への聞き込みも行わなかったばかりか、代替となる支援策すら決まっていなかった。

3.市民の声も一切無視
上記奨学金の急な廃止で打撃を受けた保護者たちが市長を訪問し、初めて受給者への影響を知った市長は「救済案を出す」と明言したにも関わらず、結局は何の具体策も提案せず、うやむやにした。

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 令和6年5月21日市長が提出した教育長人事議案が、市議会で賛成3、反対14の反対多数で否決され、同日教育委員会からは白川景子氏の続投を求める要望書が提出されました。

 この問題は今年2月、市長が突如、一切の事前説明や話し合いもないまま、教育長の交代を教育委員会に通知した、という市長の一方的かつ強引な手法に端を発しています。これを受け市長と教育委員会の間で一度のみ協議が行われたものの議論は平行線のままだったため、教育委員会は白川氏続投の要望書を提出しました。

    しかし白川氏の任期満了がせまるにも関わらず、市長は要望書に対し一切の返答もせず、状況を心配した市議らの意見にも耳を傾けることなく、公に市長の人事案を説明することもないまま、5月21日に濱田久美子氏の教育長人事議案を提出するに至ったのです。そして議会で否決された結果、教育長不在という前代未聞の異常事態となりました。

 この問題の根本には、市長の教育委員会軽視の姿勢や、少数派どころか多数の意見にすら耳を傾けず、自身の公約を強引に押し進めようとする独断的な姿勢があります。本来ならば教育の場に政治的思惑が入り込まないよう、教育委員会は市長から独立した組織として位置付けられます。教育委員会の特性は、①首長からの独立性、②合議性、③住民による意思決定、と文部科学省によって定められています。

  依光市長は教育委員会と丁寧に協議することもなく、自身の人事案が否決されたら市長を辞めるなどという政治的圧力をかけ、教育に大切な継続性、安定性を断ち切ろうとしています。

 市長は学園都市構想を公約に謳い、この改革を進めることができるのは濱田氏のみだとしています。しかしながら、香美市の教育委員会は白川教育長の下、すでに「学園都市 香美市」を掲げ、IB 教育や探究的な授業、山村留学の受けいれ等、改革的な取り組みの数々を重ねており、更なる発展が期待できる状況でした。その流れを明確な説明なく断ち切ろうとする市長の姿勢は教育の中心であるはずの子どもたちを置き去りにするものであり、言語道断です。子どもたちにとって、ひいては香美市の未来にとって、教育を市長の政策の道具にすることは許されません。

 私たち「香美市の教育を考える会」は昨年、香美市高等学校等奨学金の給付が年度途中に突然打ち切られた事態を受け発足しました。奨学金受給の有無に関わらず、廃止の経緯に疑問を感じた保護者有志が集まり、教育委員会や市長と懇談を行いましたが、この廃止も教育委員会の意向を無視し、市長の独断で押し進められたことが判明しました。市長は私たちとの懇談の際、急な廃止で打撃を受けた受給者の苦境を初めて知り、「経過措置としての救済案を考える」と明言したにも関わらず、その後救済案の提案はなされませんでした。

 これほど強引に廃止した奨学金ですが、廃止した段階では「代替となる支援制度」はまだ検討すらされていませんでした。結果的にバス代補助の増額という形に収まりましたが、奨学金廃止の事由となった「支援の公平性」は、地理的制限を設けるバス代補助では担保されません。これまで補助の対象であった大学生・短大生は補助から外れる結果となりました。市長の独断で、突然支援の対象から外された子どもたちは一体どんな気持ちでしょうか?

 このように教育長人事の件に限らず、市長はかねてから、教育委員会や市民の声を軽視し、説明を尽くすこともせず、今回のような教育長不在という事態に至りました。

 依光市長には市の教育政策に独断的な介入をすることなく、多様な意見に耳を傾けて、一方的に物事を押し進めることのないよう、強く求めます。
 
香美市の教育を考える会 一同