雪組公演 ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル | 続アメマのおとしもの

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2024年1月3日~2月11日 東京宝塚劇場・雪組公演

 

昨年、宝塚大劇場で11月10日に初日を開ける予定でしたが、昨今の歌劇団の諸事情により、初日が延期されたり、初日を開けたものの途中で中止となったりで、公演できたのは数日だけ。なので大劇場で観劇できた人は僅かだと思います。私は大劇場はチケットが取れずでしたし、もう諦めてましたが、運よく阪急交通社の貸切公演のチケットが手に入り、観劇出来ることになりました。

しかしスカステで初日のダイジェストを見ても、面白そうに感じず、タイトルもやたら長くて覚えられないし、生田氏は2021年に宙組で「シャーロック・ホームズ」をやってるのに、今度はその作家を主人公にするとのこと・・・。生田氏はヒットは出すけど、ホームランがないんですよねぇ。なので全然興味が沸かないままの観劇となりました。

 

2月9日11時公演、1階23列目で観劇。

●Happy“NEW”Musical「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」 作・演出/生田大和

 

「名探偵シャーロック・ホームズ」をこの世に生み出したことで、世界的な名声を手にした英国の作家サー・アーサー・コナン・ドイル。しかし、彼自身は、シャーロック・ホームズを恨んでいた……!?ユニークなエピソードに満ちたコナン・ドイルの半生を、「ある日、自らの筆によって生み出した“架空の存在にすぎない筈の”シャーロック・ホームズがドイルの前に姿を現したら……?」という奇想天外な発想で描く物語。

 

暇な医者でボクサーで売れない作家のコナン・ドイルが、ふと手にしたペンで架空の人物のシャーロック・ホームズが出てきたことで、作品は売れてメジャーな作家になるが、ホームズに翻弄されていることに不満を抱いて、その作品を書かなくなると、たちまち世間の評判が落ちて行く・・・というもの。

殺伐としておらず、要するに作家の苦悩と成功のお話し。それ故に盛り上がりに欠けるのかと思いきや、割と面白かったですね。彩風咲奈がトップになってからは、ことごとく芝居が駄作でしたので、今回は退団を前にしてようやく秀作に巡り会えたと思います。

ただクリエイターの苦悩なら、生田氏はこれまでに「ラスト・タイクーン」「Shakespeare」「巡礼の年」がありますが、今回はコメディ仕立てにしたのが良かったですね。寒いコメディは宝塚には多くありますが、今回はそうでなく、オーバーな演技もほどほどで、クスッと笑えるオシャレなコメディといった感じ。んで登場人物がほとんど変です(笑)。

ただ後半にかけては、「名探偵シャーロック・ホームズ」のキャラクターのモリアーティも出てくるので、宙組公演を見ていたら分かりますが、そうでないとなんのこっちゃ分からんと思います。

ラストはハッピーエンドで終わるので、サブタイ通りの「ハッピーなミュージカル」でした。

 

主演の彩風咲奈は、売れない作家のアーサー・コナン・ドイル。

病院が暇であろうが、作品を書くことに熱中しているお気楽な人物。かといって悩まないわけでもないし、妻をしっかり愛してるし、金持ちになりたい、別々に住んでいる両親や妹たちと一緒に住みたいという思いもあります。それ故に成功が、全ての幸せを掴めるわけでもないと言うことも知ってしまいます。観劇する側が感情移入しやすい人物にしている生田氏の手腕に、この作品の成功があると思います。彩風自身も肩に力が入り過ぎず、しかしリラックスし過ぎずという絶妙なバランスでお芝居が出来ており、これまでの作品ではなかった魅力がありましたね。とくにホームズに翻弄されたり、妻とのやり取りに面白さがありました。やはり生徒を生かすも殺すも作品次第ですね。

 

相手役の夢白あやは、ドイルの妻のルイーザ・ドイル。

常に夫を信じて応援し、最後はホームズの仕業で体調を崩しますが、とにかく明るくて華やかさがありました。ちょっとオーバーな演技も鼻につかず、コミカルさがあって良かったですね。夢白は引き出しが多そうなので、これからも期待できそうです。

 

二番手の朝美絢は、シャーロック・ホームズ000。

架空の存在の彼がドイルの前に現れて・・・。まぁスカーレットⅡみたいな存在ですね。ホームズの語ることはドイルには図星なことで、それ故にドイルと衝突してしまいます。ですが、段々とその意味を理解するドイルによって、ホームズが昇華できるのです。やっぱり上手いよなぁ・・・あーさもコミカルさとマジのバランスが絶妙で、やり過ぎずなところが良かった。ここがやり過ぎてしまうと、ホームズが嫌な人物に見えてしまいますからね。

三番手の和希そらは、雑誌の編集長のハーバード・グリーンハウ・スミス。

ただの我儘編集長ではなく、ちゃんと作品を見る目を持ってます。最後の作品でドヤ感が復活し、これぞ和希そらというキャラクターになってましたが、宙組時代の嫌なドヤ感でなく、説得力のある感じにですね。この存在感とお芝居の上手さがあるので、退団が残念でなりません。

 

催眠術師のミロ・デ・メイヤー教授を縣千

うさん臭さ満載(笑)。特に為所はないものの、ドイルにペンできっかけを与え、自分もそのペンで転職して成功します。

アイルランド問題担当大臣のアーサー・バルフォアを華世京

まだまだ若手だと思ってたら、もう本公演で目立ちつ役を貰っているとは・・・。まだ大臣の貫禄はないですが、その紳士ぶりはカッコよくて良かったです。

 

この作品ではトップ娘役以外はそこまで娘役に目立つ役がなく、ドイルの妹の野々花ひまりや、雑誌の編集部員の音彩唯も、さほど活躍はしてませんでしたね。

 

 

23列目でオペラグラスも使わずに観劇したので、細かい部分があまり分かりませんでしたが、大雑把に見ても楽しい作品でした。戦争や革命などの話もいいですが、たまにはこういう殺伐としない作品もいいですよね。