星組公演 VIOLETOPIA | 続アメマのおとしもの

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2024年1月5日~2月4日 宝塚大劇場・星組公演

 

前物「RRR」が実に面白く、これは一本立て大作にしても良かったのではないかと思いました。レビューの方は演出家指田珠子氏の大劇場デビュー作。タイトルから宝塚の象徴である「すみれ」を取り上げ、劇場をテーマにしてる一風変わった作品だそう。昨年の「万華鏡百景色」や数年前の「BADDY」など、女性演出家のこれまでと違ったショー(レビュー)作品は、結構賛否両論あるので、110周年の幕開けや正月なんだから理屈抜きに楽しめるショーがいいのになぁなんて思い、少し心配。デビュー作は意気込みもあるから、あまりそれが強いと前衛的になってしまいますからね。

スカステニュースのダイジェストや、フィナーレ生中継を見ましたが、あんまりコンセプトが掴めぬ感じ。

 

1月10日13時公演、1階14列目で観劇。

※ネタバレ注意。

●レビュー・シンドローム「VIOLETOPIA」 作・演出/指田珠子

 

ユートピア、ディストピア・・・。「TOPIA(トピア)」は「場所・郷」を表す言葉。「Violette(スミレ)」が、110年咲き続ける劇場、Takarazuka。そこにはいつも何かに魅了された者たちが集う。喝采、憧憬、熱狂、孤独、そして希望・・・。時代や国を超え、劇場の光と闇を描く豪奢なレビュー作品。異界「VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)」に棲むもの達が、宝塚歌劇110周年の幕開きを盛大に祝います。

プロローグ後は銀橋で、トップコンビが「ぬかるみ」という曲で甘いひととき。

 

◆追憶の劇場

森の中の廃墟にしれっと登場するのが礼真琴。初っ端から芝居風な始まり方で、そこからかつての華やかな劇場が蘇るという感じ。CGも使いながら、徐々に華やかなレビューのプロローグ場面に展開します。あるあるパターンながらも、闇から光という感じで、プロローグの明るさが際立ちます。特にレビューの美女の舞空瞳は一人だけ変わった衣装で、生命が宿る植物という設定なんですかね?

主題歌も耳に残るし、スタークラスの銀橋渡りも楽しいし、なかなか楽しい始まりです。

 

◆バックステージは虚構

裏方の青年の暁千星が、ダンサー(花嫁)の詩ちづるに想いを寄せていて、ダンサー(恋人)の天飛華音の衣装に袖を通すと、夢の世界へ誘われるひとときの虚構。

ここもスターを目指す青年のあるある場面ながらも、暁・詩・天華えま・天飛などのダンスシーンが面白かったし、なんと言っても詩の可愛さが半端ない。ただ曲が変調していくのが、あまり好きでなかったですね。

 

◆サーカス小屋の宿命

砂漠の村に旅芸人が訪れて、村の女の舞空が不思議な世界へ・・・。座長の極美慎は最初にセンターで登場したときの華やかさに驚きましたね。バウ主演の時はそう思わなかったのに、「1789」でかなり成長したのを見ましたが、ここまでとはね。

ヘビの礼は流石のダンサーで、昔にあった「BLUE・MOON・BLUE」の紫吹淳を彷彿させます。小桜ほのかの歌はやはり絶品なんですが、場面的にちょっと退屈に思ってしまいました。ストーリー性のある場面が続いたからですかね。

 

◆宮廷と役者の青春

一転して「Highway Star」でロックな中詰になります。衣装が凝っていて、これまでの宝塚ならラテン系が多かったですが、宮廷衣装をPOPな感じにしてかなり独創的な感じ。一応、ここもパンフを読むとストーリーはあるようですが、中詰ですからとにかく明るく・華やかに・賑やかに、そして「Lisztomania」で客席降りして、新年の幕開けを祝うように楽しかったですね。

 

◆楽屋、燻る憧憬

楽屋で極美らファンの紳士が、憧れの女性歌手の思いをコミカルに歌い踊ります。このあたりまで観ていて、安蘭けいのサヨナラ公演だった「ア ビヤント」の雰囲気と似てるなぁなんて思いました。曲は宝塚では良く使われる「Misirlou」。

 

◆狂乱の酒・観客・酒

退廃的なキャバレーで、パンツスタイルにロングヘア―の舞空が紳士たちを魔窟へ誘います。ここはひっとんの妖艶な雰囲気に見とれましたね。作品の後半に入り、こういう騒ぐ場面からまた廃墟に戻るんだろうなぁと思っていたら、案の定そうでした(笑)。

 

◆孤独

最初の廃墟の場面に戻り、そこにこれまでの場面の登場人物が影法師のように現れます。こういう終わり方も、この作品が芝居っぽいなと感じます。ていうかサヨナラ公演の手法ですよね。

 

◆エントランス・ノスタルジー

劇場の玄関となり、上手からトレンチコートを来た天華がセリ上がって、しっとりと「カサブランカ」の「As Time Goes By」を歌い、銀橋を渡る餞別場面。いや、もうトップスターのサヨナラ公演かと思うぐらいの演出で、ぴーすけの退団に泣けました。退団が惜しくてなりません。

 

◆音符に翻弄され(ロケット)

指揮者と称したロケットボーイ4人が、音符たちとロケットへ展開。やっぱ稀惺かずとは目立ちますね。

 

◆大階段・継承

大階段で男役の群舞ですが、全員サングラスをかけて近未来的なフィナーレ。「The King Must Die」でビシバシ踊って、礼の久々のキレキレのダンスにシビレマシタ・・・。休養期間を経て、礼真琴の復帰を心底祝いたい客席のムードが感じられました。娘役もサングラスは驚きましたね。そして後半は暁を中心に群舞へ。もうアリも貫禄十分です。

 

◆大階段・デュエット

久々のトップコンビのデュエダンは「白い恋人たち」。あまり大技な振りはないものの、トップコンビが揃って、芝居ではなかったキスシーンもあって、やっぱり星組はこの二人が揃わないとねと嬉しくなります。

 

◆パレード

ぴーすけのエトワールでパレード。キンピカな衣装ではないけど、上品さを感じるパレードで、暁の二番手羽根、ひっとんのロングヘア―に目を奪われました。

礼の大羽根にはなんだか決意が感じられ、もう今年そろそろなのかなぁと。

 

 

 

全体的にストーリー性の場面が多いので、やや地味な雰囲気はあるものの、指田氏の独特の世界観が面白く、終わってみれば最初の心配はよそに、楽しめた55分でした。

しかし好き嫌い分かれる作品でもありますね。指田氏や栗田氏が二作目を発表して、それぞれの世界観が継続できるとまた宝塚の新たな作風が出来るなと期待します。