雪組公演 愛するには短すぎる | 続アメマのおとしもの

続アメマのおとしもの

鉄道・吉本・宝塚のことなど・・・。

2023年8月25日~9月18日 雪組全国ツアー公演

 

今年二度目の宝塚の全国ツアー公演は雪組で、再演物の二本立て。お芝居は2006年に湖月わたるのサヨナラ公演として星組で初演、その後2011年には中日劇場で再び星組、2012年には全国ツアーで月組により再演された「愛するには短すぎる」。

正直言って、そんなに何度も再演されるほどの名作ですかね?原案が小林公平氏で、そこに義理立ててるのかもしれませんが、内容も脚本を書いた正塚晴彦氏っぽくなく、どちらかというと石田昌也氏という感じです。

 

梅田芸術劇場メインホール 8月27日16時30分公演、2階3列目(梅芸会員先行でこの席かよ)で観劇。

※ネタバレ注意。

●ミュージカル「愛するには短すぎる」 原案/小林公平 脚本・演出/正塚晴彦

 

大西洋を横断しニューヨークへと向かう豪華客船を舞台に、船上という限られた場所、4日間という限られた時間の中で生まれた束の間の恋の純粋さと狂おしさを、切なく美しく描き出した物語。船上で繰り広げられる様々な人間模様を、明るいナンバーを織り交ぜ描いた心揺さぶるミュージカル作品。

 

あらすじにもあるように物語が船上ですので、夢のシーン以外の99%が船の場面でさほど変わり映えせず、豪華なセットを楽しむよりも、個々の役の台詞のやり取りを楽しむお芝居ですね。初演時はサヨナラ公演にしては軽いタッチだと感じ、ラストはそれらしい雰囲気に持って行きましたが、さほど感動はせずで配役がそれぞれの生徒の個性に良く合っていたなと思っただけでした。再演やその後の月組では、それなりの作品に仕上がってはいましたが、やはり初演に勝るものはないなと。それにその時の配役もなんとなく合ってないようにも感じたり・・・。

しかし今回の再演は一番初演に雰囲気が近かったように思います。特に主要三役と専科の4人がそう感じました。あるあるなんですが、別箱に二・三番手が出ると、全ツの主要な役に若手が繰り上がります。それはそれでチャンスですし、頑張ってはいます。しかし布陣的に結構弱いことがあるんですよね。

今回芝居よりもショーでそれを強く感じでしましました。

閑話休題。

さほど大きな事件が起こる訳でなく、正塚氏お得意の革命や戦争、ピストルでドンパチもなく、ただ幼馴染みとの再会で燃え上がる想いと、宝石泥棒がメイン。なのに約1時間半を眠くもならずに見せるのは、正塚氏の台詞のやり取りの面白さの手腕かと。休演者が二名いたことで脇がちょっと弱くなってしまった部分もありましたが、彩風・夢白・朝美・凛城の4人がかなり健闘したお芝居でした。

 

財閥の御曹司、フレッド・ウォーバスクを彩風咲奈

孤児だったのが、資産家の養子となって婚約者もいて・・・と順風満帆な感じですが、どうもイマイチ納得できない感じ。ただの金持ちのボンボンというのではないけど、ちょっと押しが弱くて慎重派で優しくてというのが初演の湖月の役作りとよく似ていました。台詞回しや歌い方もなんとなく湖月っぽかったので、再演ながらもこの役にハマっていたと思います。バーバラとの恋の再燃は、もどかしくもありますが、現状を捨てることは出来ない葛藤が良かったですね。

 

船のショーチームのメンバーのバーバラ・オブライエンを夢白あや

華がありちょっと勝ち気な感じもピッタリで、娘役の割には押しが強いですね。なので彩風とのバランスが良いのかもしれません。前娘1は控えめでしたしね。夢白は少し低めな声も初演の白羽な感じでしたし、歌もさほど上手くはないけど、聞いててストレスになるほどでもないというビミョーな歌い方(笑)。しかしその舞台映えする容姿がショー場面では生きるし、フレッドと再会して一女性になるのも良かったです。

 

フレッドの友人で劇作家のアンソニー・ランドルフを朝美絢

一見すれば軽薄でお調子者に見えて、「なんやねんコイツ」と思わせる一歩手前で止めて、上手く笑いで持って行くのが絶妙でした。特に小切手の場面なんて笑いますよね。でも友人思いで、ちゃんと宝石泥棒の犯人も突き止めます。あーさのこういう役って二番手になってから結構来ますが、もっと捻くれたサイコパスなのも見たいですね。

 

ウォーバスク家の執事のブランドン・オサリバンを専科の凛城きら

約12年ぶりの古巣雪組への出演。初演の未沙のえるほどの飄々さは難しいと思いますが、それでもなかなかの出来栄えで、本人は至って真面目にやってるだけに、それが面白いんですよ。出てくる度に何か期待してしまいます(笑)。

 

自称女優のドリー・マコーミックを音彩唯

明るいおバカさん(失礼)を好演し、音彩のキャラとはかけ離れた役だったので逆に面白かったです。キャラ的には野々花ひまりでしょうけど(笑)

 

ブロードウェイプロデューサーのマクニール・オコーナーを諏訪さき

うーん、可もなく不可もなく。とりたてて為所のない役ですがね。

バンドマネージャーのフランク・ベンドルイトンを華世京

最近めっちゃ推されてますが、この役はちょっと早かったかな? もっといやらしいほどの憎たらしさが欲しかったです。

 

 

やはり主要三役と専科の4人で持ったお芝居だなと。元々目立つ役が少ないのもありますが、それでも生徒の個性が粒だっていれば、脇の役でも面白みが増したと思います。今回はそれがちょっと惜しかったかなと感じました。