月組公演 ELPIDIO~希望という名の男~ | 続アメマのおとしもの

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2022年12月3日~12月11日 シアタードラマシティ・月組公演

●ミュージカル・ロマンティコ「ELPIDIO~希望という名の男~」 作・演出・振付/謝珠栄

 

植民地が次々と独立し、隆盛を極めたスペイン帝国が終焉を迎えた20世紀初頭のマドリード。ELPIDIOというペンネームで弱者に寄り添う詩を投稿していた主人公ロレンシオが、瓜二つである軍の大佐・アルバレス侯爵の身代わりを引き受けたことから始まる物語。

 

12月8日11時30分公演、2列目(神席!)で観劇。

※ネタバレ注意。

座付ではない謝演出の作品はこれまで何作かありましたが、あまりいい印象は正直ないんですね。昨年の「ヴェネチアの紋章」ではガッカリしたし、昔々の「MAHOROBA」はなんのこっちゃ分からんかったし・・・。星組の「眩曜の谷」は佳作でしたが。

今回は初の別箱での作・演出・振付ということで、どんな作品か不安と期待での観劇となりましたが、ポスターの鳳月杏のドアップがまず強烈!さらに神席の2列目ということもあって、体調を整えて観劇しようと、昨夜は早々に寝ました(笑)

さて作品は歴史的背景はややこしいものの、展開は至って分かりやすく、別箱の宝塚オリジナルミュージカルの定番とも言える内容。重々しい雰囲気はあるものの、コメディタッチな場面もあって、結構楽しめる話でした。ラストはややご都合主義的な終わり方な気もしましたが、まぁハッピーエンドだしいいかなと。

それに月組全ツの主要メンバー以外が手薄な感じだったのとは引き換えに、DCメンバーは芝居達者が揃っていたのもあって、芝居に厚みがあったと思います。コメディ的な場面では寒い笑いもなく、ちゃんとお芝居の筋に沿った、場を和ます品のある感じの笑いの取り方も好感が持てました。

謝氏の独特の振付も、自身の作品だとそれに溶け込んでいましたね。

 

主演鳳月杏はELPIDIO(ロレンシオ)とアルバレス侯爵の二役。

ロレンシオは過去に何か背負い、愁いを秘めた感じがあって、カッコよかったですねぇ。なのにアルバレス侯爵の替え玉としてのコミカルな演技もなかなかのモノで、芝居達者なところを見せてくれました。徐々にパトリシアと関係を深めていく様は、優しさと包容力が溢れてました。歌も芝居も流石の安定力で、見ている者をグイグイ惹きつけてくれます。最後にチラッと出てくるアルバレス侯爵は座興的な感じですが、時間に余裕があれば新喜劇的に二役が交互で出てくるのも見たかったですね。

フィナーレでのデュエダンはもうトップスターのようでした。

 

ヒロインでアルバレス侯爵の妻パトリシアを彩みちる

これまで子供っぽい役や少女的な役が多かったのですが、雪組最後の野上冴子あたりから大人な女性の役も似合ってきて、今回の役は良かったです。旦那と離婚協議中という設定で、ちゃんと人妻で貴族に見えたし、何より佇まいが綺麗で、淑女という言葉が似合う女性でした。雪組時代には停滞期があったけど、月組に来て路線に復活しましたね。

 

アルバレス侯爵の秘書官のゴメスを専科の輝月ゆうま

この作品の二番手格と言ってもいいほどの存在感と安心感。何か裏があるのかと最初は思いましたが、なんのなんの忠実な秘書官でした。姿勢もピシッとしてるし、動きがキレイなんですよね。

新聞社で働く女性マグダレーナを白雪さち花

べらんめえ姉さん的なお得意の役ですが、彼女はやりすぎる感があるんですが、今回はいい感じで止めていたと思います。女性陣のリーダー的存在が副組長らしさを出していました。

Caminoの主人マルコスを千海華蘭

髭モジャの親父をコミカルに好演し、客や仲間に慕われているのが分かります。

アルバレス侯爵の執事のアロンソを蓮つかさ

ゴメスと対照的にコミカルでちょこまか動くのがなんとも面白く、これは芸達者な生徒でないと難しい役をレンコンは流石です。ここもなにか裏があるのかと思いきや何もないけど(笑)

Caminoに集う仲間のミゲルを佳城葵

線の細さもありますが、髭をたくわえて男っぽさを出してました。彼女も緩急自在なお芝居が出来るから、脇でもかなり光ります。

スペイン軍のロメーロ大佐を柊木絢斗

初めて意識して見ましたが、なかなか上手かったですね。いかにも仕事はできないけど、偉そうな軍人って感じしましたから。

 

ロレンシオを兄と慕うセシリオを彩海せら

爽やかな風貌ながらも、何か思想があったり、ロレンシオの為に奔走する姿に熱さを感じました。若手期待のスターだけに、華がありますね。歌もなかなかのものです。

Caminioに集う仲間のエステルを蘭世惠翔

セシリオに少し恋心を抱いてます。美人ですねぇ~もっと起用されてもいいと思うのですがね。

マルコスの娘のベニータをきよら羽龍

そばかすを書いて、元気いっぱいの女の子を好演。ロレンシオが気になるけど、そこまで重い気持ちで書かれてないのが逆に良かったです。

 

 

こんな感じで全く下手な生徒がいなく、上級生から下級生に至るまでお芝居が上手いし、役がぴったりでした。主演コンビは言うまでもなく、専科の輝月や白雪、千海、蓮、佳城の存在は大きく、特に重厚でないお芝居ですが、芝居の月組らしい感じがしました。

若手陣もなかなか頑張っていたし、今年最後の観劇が良い作品で良かったです。