2022年2月19日~2月25日 KAAT神奈川芸術劇場・星組公演
●ミュージカル・コメディ「ザ・ジェントル・ライアー~英国的、紳士と淑女のゲーム~」
原作/オスカー・ワイルド 脚本・演出/田渕大輔
オスカー・ワイルドの戯曲「An ideal husband(理想の夫)」をもとに、独身貴族の青年が、“理想の夫”とされる親友のスキャンダルを巡って、やがては真実の愛に辿り着く姿をユーモラスに描く作品。
瀬央ゆりあ初の東上作品ということで、チケット難この上なし。しかもバウ公演が全て中止になってしまい、ますます貴重な公演となりました。なのに我がはるこちゃんが休演・・・。
2月21日15時30分公演、1階19列目で観劇。
※ネタバレ注意。
私の苦手な宝塚コメディということで、ちょっと構えてましたが、轟コメディみたいな白々しさはなく、言葉の行き違い、言葉の足りなさ、嘘と真実の入り乱れでの面白さでした。
物語の芯となるのが、運河建設に関する不正な株取引の鍵を握ってるローラという女性なんです。ですが1幕でこれを引っ張って盛り上げて、2幕に繋げるのですが、結局なんでローラがそこまでして綺城演じるロバートを脅すのか?その切り札とされてる内容も明かされないまま。
それとヒロインが3人という設定なんですが、これもどうなんですかね?? 1幕で盛り上げた割には、2幕は無理やり1組のカップルを作るためのハッピーエンドに持って行った感があります。それだけに恋愛ものとしての焦点がぼやけてしまったように思います。
これは人事的な臭いもしますがね(笑)
主演の瀬央ゆりあは、プレイボーイの子爵アーサー(ゴーリング卿)。
小粋でおしゃれな感じはすごく出てまして、なんてことない仕草もカッコ良く、英国紳士らしさがありました。女性に対してはちょっとええ加減なものの、友人を思う気持ちや、過去に愛した女性への想いなど、様々な感情が上手く表現できていました。歌も芝居も言うことなし。ポスターにあるような、トランプは使ってませんでしたがね。満を持しての東上公演が、脚本はイマイチですが、瀬央のカッコよさは十分に発揮できたので良かったと思います。返す返すバウが中止になったのが残念です。
相手役その1にかつてのアーサーの婚約者だったローラを紫りら。
はるこちゃんの代役でしたが、声色や台詞回しなどそっくりで驚きました。お芝居的には急な代役で健闘していましたが、やはり華と貫禄に欠けるなと。何かを企む、悪女には見えない。「眩耀の谷」の敏麗みたいな雰囲気をの役だけに、はるこちゃんに充てて書いたんだろうなと。フィナーレのところだけ、水乃ゆりが代役。
相手役その2にロバートの妻ガートルードを小桜ほのか。
理想の夫と、夫の真実、そしてアーサーの想いを知って思い悩む女性。さすがヒロイン経験があるだけに、見せ方が上手いし、立ち居振舞いに品が感じられますね。まず声の出し方が柔らかいし、優しい。それだけで見ててほっとします。
相手役その3には月組から組替えになった詩ちづるが、ロバートの妹メイベル。
兄の部下に度々プロポーズされてるものの、想いはアーサーです。嫌みなく、可憐に英国女子を好演。ただ最後にアーサーと結ばれるのが、それまでの過程が描かれてないだけに唐突すぎる。
ローラは去る、ガートルードは元の鞘に収まる、メイベルだけが主人公と結ばれる・・・なんか人事的な臭いがしません?(笑) そうそう、フィナーレでトリプルヒロインと瀬央のダンスがあるのですが、詩だけリフトがあるんです。ですがその直前で裾を踏んでしまい、リフトが中途半端になってしまってました。
下院議員でアーサーの友人ロバートを綺城ひか理。
真面目に誠実に政治家をやってたが、過去の不正をローラに握られて・・・。二番手格の役の美味しさがありましたし、それに違わぬ演技力と存在感でした。どんなに思い悩んでも、妻を一途に思う気持ちや、政治家として再び歩む決意など、誠実さが表れていました。
ゴーリング卿邸の執事フィブスを大輝真琴。
生真面目かと思いきや、コミカルさもあって、緩急自在で上手かったですね。
アーサーの父キャヴァシャム卿を美稀千種。
貴族の親父の雰囲気があり、息子やその友人を思う優しさが、組長職とリンクしてました。
それぞれの生徒は役を忠実に演じ、個性も生かせていたと思います。しかし前述したように、トリプルヒロインにしたことで、恋愛ものとしての焦点がぼやけたように感じました。私個人的な考えですが、誰かにヒロインを絞っていれば、もう少ししっかりした作品になっていたように思います。例えば・・・ローラがヒロインなら、ロバートへの悪事の切り札を握ってることが、何かの復讐だと。その真実を知って反省し、アーサーとよりを戻す。
ガートルードをヒロインにするなら、アーサーの自分への想いを知って、ロバートの悪事で別れようと思い悩み、アーサーに思いが傾きかけるが、やっぱり元の鞘に収まる。アーサーは去っていく・・・。
メイベルをヒロインにするなら、アーサーと二人で協力して、兄夫婦の窮地を救うとか。
ま、勝手なこと言って、ほなお前が本書けや!と言われそうなので、この辺でやめときます(笑)
とにかく貴重な公演を観劇できたことに感謝です。