2021年1月1日~2月8日 宝塚大劇場・雪組公演
芝居がなかなかの出来で、ショーにも期待がかかります。今回は演出家生田大和の初のレビュー作品。芝居では佳作は多いものの、超ヒット作がないけど、自身のこだわりは強い方で、この作品にもそれが出ている感じ。望海風斗、真彩希帆のサヨナラに相応しい作品だったのか?
数多くのCMやアニメ、映画音楽を手掛けており、様々なアーティストへの楽曲提供をおこなっている菅野よう子が宝塚に楽曲提供。
1月15日13時公演、1階7列目で観劇。
※ネタバレ注意。
●レビュー・アラベスク「シルクロード~盗賊と宝石~」 作・演出/生田大和
遙か古よりこの「シルクロード」を彷徨ってきた宝石の、その煌めきの中に宿る数多の記憶を辿る旅へと盗賊は誘われてゆく…。過去から未来へ、そして未来から過去へ。時代と空間を超えた旅の中で綴られる、エキゾティシズムに富んだレビュー・アラベスク。
開演前から大きな砂時計やら、ラクダやらの装置でシルクロードの雰囲気が高まります。昔に宙組でやった「ルナロッサ」みたいな感じ。
◆プロローグ・シルクロード~盗賊と宝石
まずはキャラバンの男女が登場し、この公演で退団する彩凪翔が歌い始めて、シルクロードの世界へと誘います。芝居の演出家らしい幕開き。
そして盗賊の望海風斗が登場、その後は舞台天井から吊物に乗った真彩希帆も出てきて、銀橋での歌い継ぎなど、レビューの華やかさ満載。主題歌が印象に残りにくい感じはありますが・・・。
盗賊と真彩の青い宝石(ホープ・ダイヤモンド)という設定が、ラストまでストーリー仕立てなところが、テーマ性を強く出してます。ですがテーマ性が強いと、場面が似たり寄ったりになる可能性があるんですよね。
芝居同様に望海も真彩も声量ガンガンで歌いまくってくれます。なので二番手以下の印象が薄くなりがちなのを、銀橋での歌い継ぎで印象付けます。
◆シルクロード幻視
プロローグの居残りで真彩が歌い、その後に次期トップコンビの彩風咲奈と朝月希和の場面。青い衣装が爽やかで、若さを印象付け、彩風と朝月のふんわりしたムードが漂います。
彩風は潤花と組むものだと完全に思ってましたが、朝月とのコンビも期待出来そうな感じ。プレお披露目の全ツ作品がイマイチ納得できませんがね。
◆ペルシャ・運命のアラベスク
黄金の奴隷に仕立てられた盗賊の望海とシェヘラザード(宝石)の真彩との、ちょっと色気のある場面。朝美絢の成金男ぶりも面白く、最初のコミカルな感じから結構妖しい雰囲気の展開が意外でした。
彩凪が望海を捕まえてのハケ際、「こら、こら~盗みはダメでしょ~」と彩凪先生やってました(笑)
◆インド・神々の饗宴
綾凰華、星南のぞみ、縣千、夢白あやのWコンビとロケットから始まる中詰。ここで星南の存在によくやく気付きますが、夢白の華には負けてますね。星南も有沙瞳が雪組にいた頃が全盛期か?
そして賑やかな場面が展開し、一旦雷でトップ・二番手のダンスセッション場面を挟んで、もう一度賑やかになるという緩急ある中詰。
◆中国・蒼く萌え立つ、緋き夜
最初は彩風からジャスっぽい始まり方をするので、そういう展開かと思いきや、ナイトクラブになるとまさかの真彩のラップ。ホントなんでも歌える娘役ですね!そこに懐かしい「BAND NEON/上海」の劉衛強の望海が登場します。あの作品は朝夏まなとが主演でしたが、それを喰ってしまうほどの存在感でした。ラストはタンゴ。
◆盗賊と宝石
戦争、命、再生というお馴染みの展開ながらも、ようやくサヨナラ公演らしい雰囲気になって行きます。ここまで来ると、最初の盗賊の印象から望海本人、真彩も宝石から本人という感じになって、鳩の設定の彩風と朝月へのバトンタッチ、組子への「後は頼んだ」的で、なんだかセンチメンタルになって来ます。
◆フィナーレ
フィナーレの導入は餞別三番手の彩凪から始まり、大階段での娘役から男役の黒燕尾へと展開。「オール・ザ・ウェイ」でビシッと決め、望海から彩風に青い薔薇(?)を渡して、バトンタッチします。
そしてトップコンビのデュエットダンスへ。もうね、白い衣装で踊る二人が神々しくて、二人の笑顔が眩し過ぎて、泣けてしまいました。こんな歌ウマコンビ、今後出て来るのだろうか???
パレードではエトワールは有栖妃華。階段降りも朝美より彩凪が後で、花を持たせた感じ。
これで見納めのトップコンビの笑顔がホントに素晴らしく、コロナ禍ということを忘れそうでした。とにかく無事に千秋楽を迎えられ、きちんと退団できるように願います。
生田大和の初レビュー作品は秀作で、この混とんとした現在の状況に、改めてエンタメの必要性を感じましたね。