今回、日本の空港で、まだ機材が前の空港を出発してないからチェックインできない、と言われた時点で多難が予想されたので、本屋へ直行。新刊書のコーナーで、Bostonに縁の深いおふたりの分厚い対談集を発見し、このシチュエーションにこれ以上ふさわしいものはあるまい(Albanyのあと、Bostonで2、3仕事を入れてます)と思い、即購入。
- 小澤征爾さんと、音楽について話をする/小澤 征爾
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いつもながら、村上春樹の文章は、「始めに」からぐいぐいくる。
内容はほんとうに音楽の話にフォーカスされており、どこの街がおもしろかった、という類の余計な情報は最小限に抑えられている。
マエストロと言えば、今まで私にはバーンスタインの愛弟子という印象が強かったのだが、この本を読むと、かなりカラヤンの薫陶も受けていたことがわかる。マエストロの音楽はどう考えてもドイツ正統派の系譜に属してないと思うので意外だったのだが、考えてみればカラヤンもそうとういろんなものをやってるので、そのあたりでバランスが取れてるのだろう(ただし、カラヤンはマーラーは最後までお気に入りではなかったことも読み取れる)。
もうひとつ意外だったのは、英語で苦労した話。
マエストロと言えば、英語やドイツ語でオケに指示を出す映像を昔よく見た気がするのだが、若いころはぜんぜんだったそうだ。バーンスタインが音楽教育についてたくさんしゃべってたけど、そのころは英語ができなかったからよくわからなかった、今思えば惜しいことをした、と溜息をついているくだりがあるが、その気持ちよくわかる(笑)。
やはりプロフェッショナルは本業を極めるのが第一だが、外国語もできればさらに世界が広がり本業ももっと磨きがかかる、とはサッカーやモータースポーツの日本人選手を見ていても思う今日このごろ。
ほかにも、文章はリズムだという話とか、マーラーは指示が細かいぶんかえって表現に幅が出る話とか、興味は尽きない(読んでください)。
マエストロの本て、「ボクの音楽武者修行」といううんと若いころの話が古典としてあるが、それ以外目立ったものがなかった気がする。今回、自伝代わりの本が、当代最高の書き手により生み出されたことが、なんとも喜ばしい。



