じんかん
あらすじ
その男は悪人か…
主人を殺し、将軍を暗殺し
東大寺の大仏殿を焼き尽くすー
悪名高き戦国武将・松永久秀の
真実の顔とは?
私の感想
本の下に敷いてるiPadと比べてわかる通り
分厚い本でした(^◇^;)
でも、読むのが大変
とは思いませんでした
それくらい最初から引き込まれ
面白かった
題名にある「じんかん」を
漢字で書くと「人間」
「にんげん」と読めば一個の人を指す
「じんかん」とは人と人が織りなす間
つまりはこの世という意である
と作品中に説明がありました
この世を生きた人々の生き様の物語
ということでしょうか…
この作品の中でグサッと
心に刺さった文章がありました
救われたい、富を得たいと願うくせに
自らが責を負うことを嫌う
そのような者が世の大半を占める
人は太古より争いを繰り返している
たとえそれで人が天地から消え去る
ことになろうとも
それが己の代で起こらぬ限りは
止めようとしない
赤子から老人まで人世の大勢はいつも
己の代には関わりなしという
無責任な考え方で動く
私は“じんかん(この世)”をどのように
生きられているだろうか
と考えた時
私も“世の大半”のひとりだな
と自嘲してしまいました
ところで、以前からなぜか
松永久秀は好きでした
茶の湯に秀で
一国をも買えるほどの名器を所有
主人である織田信長に謀反した
荒木村重にも共通した要素は
あるんですが…全然違う
もしかしたら信長も松永弾正に
好感を持っていたんじゃないか
自分に似たものを
感じてたんじゃないか
漠然と勝手にそう思ってました
そんな私にこの作品は
ぴったりハマってくれました
天下統一に邁進する織田信長のもとへ
松永久秀が二度目の謀反を企てたと
急報が入る…
怯えながら伝える小姓でしたが
意外にも信長は笑みを浮かべます
この作品での信長は
私が思っているイメージと一寸違わず
これも良かったです
信長は かつて久秀と語り明かした時に
直接聞いたという彼の半生を
語り出すんです
松永久秀の子供の頃は謎に包まれています
それを見事な想像力で描いた
著者に拍手です
え何
なんでー
思い込みで読み進めていた私は
最初の方で著者の罠に
ハメられましたし…(^◇^;)
松永久秀には破天荒な悪人という
イメージがあります
信長が徳川家康に久秀を紹介する際にも
こう説明しています
この男、人がなせぬ大悪を
一生の内に3つもやってのけた
その3悪というのが
⒈ 主人である三好長慶の殺害
⒉ 室町将軍・足利義輝の暗殺
⒊ 東大寺大仏殿を焼く
でもその悪評の裏には
真実が隠されていることを
信長は知っていた…という設定です
また、松永久秀の城といえば
奈良の信貴山城と多聞山城ですが
興福寺や東大寺を眼下に見下ろす
小高い丘に久秀が建てた多聞山城は
華やかさでも群を抜いていたそうです
壁は漆喰の白壁、屋根は全て瓦葺き
座敷の違い棚や茶室の落天井など
久秀が初めてこの世に生み出した
この城を見た宣教師は
次のように記しています
世界中、この城のように善かつ美
なるものはないだろう
多聞山城には4階建の櫓もあり
織田信長が安土城を造る時に
参考にしたとも言われている〜
大悪人のイメージが強いのに
一方ではこのような人の心を魅了する城を
築いたりする…
松永久秀に惹かれる理由が
ここにあるのかもしれないです
こんな人におすすめ
とにかく読みやすいし
面白かったです
松永久秀をご存知ない方にも
ぜひ読んでほしい作品