「民間大水滸」解宝、蛇を斬る 1~8 まとめ読み | 水滸伝ざんまい

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中国四大名著の水滸伝について語るブログです。
原典メインのため、北方および幻想はありません。
悪しからずご了承ください。

 

好漢以外の登場人物の説明が多く、少し複雑なので、

ここまでのストーリーをまとめ読みしてみます。

 

双尾蠍 解宝が蛇を斬ったという伝説は、

ほとんど人に知られていない。

なぜ蛇を斬ることになったのか、その由来を知るために、

まず、梁山の義軍が官軍の討伐隊の攻撃にそなえ、

準備をととのえた話から読んでみることにしよう。

 

宣和三年の夏のことだった。

その日は朝からとても暑く、

聚義庁の中にもひどく熱がこもっていた。

 

宋江と呉用は、大臣の童貫が指揮をとる官軍が

どうやって梁山を討伐するつもりなのかを調べたり、

かれらに対抗するための情報を集めるために、

頭領たちを漁民組と町人組に分けて

下山させようとしているところだった。

 

呉用は、李逵には下山の許可を出さなかったが、

かれがやかましく文句を言い続けたので、

「すべて軍令に従うのだ。

誰だろうと命令を聞かぬ者は参加させん」と𠮟りつけた。

 

時遷は、李逵にちらちらと目くばせを送りながら、

「命を受けて下山するからには、すべてうまくやりますとも。

おれたちは、呉用兄貴の重大任務のために

派遣されるんですから」と答え、

李逵は、時遷が熱心に呉用を説得しているのを聞くと、あわてて、

「そうだ、そうだ。おれは山の掟はちゃんと守る。

呉用兄貴の言いつけ通りにするよ」と笑ってごまかした。

 

呉用は李逵の短気な性格をよく知っていたので、

それ以上はかれにしゃべらせず、話を続けた。

「官軍が討伐に来ようとも、われらはなにも恐れはせん。

敵を打ち破る計略も用意してある。

この手を使えば、官軍は二度と東京には帰れまい。

しかしそれには、大勢の兄弟たちが心をひとつにして

力を合わせることが必要なのだ」

 

「われらには山と湖という天然の要塞があり、

兄弟たちは各々の持ち場に分散して戦うことになる。

その下調べとして、頭領たちには、湖の岸辺の主要な場所すべてに

行ってもらう必要があるのだ。

皆は、漁師や町人あるいは狩人などの平民になりすまし、

敵の消息をさぐり、相手に気づかれぬよう見張ってもらいたい」

 

「われらの兵力を集中しやすくしておけば、

もし官軍が攻めてきても各個撃破できるだろう。

皆で次々と奇襲をかければ、

われらには利となり官軍には不利となる」

「各頭領たちは分かれて行動し、

情報があればすぐさま聚義庁に報告してもらいたい。

では、山寨の外周を防衛する水軍頭領以外の者は、

それぞれ指示された場所に行ってもらおう」

 

解宝は狩人の姿に変装すると、数名の部下を連れて山の砦を出た。

そして船に乗って北に向かい、金山という山にたどり着いた。

 

金山の頂上に登って周囲を見わたしてみると、

西南側は湖の岸より半里ほどしか離れておらず、

岸沿いに大きな道路と村があった。

この道路は東昌府や東京につづく地域の本街道であり、

山の上からは、街道を移動していく人々や荷車の様子を

くまなく見ることができた。

 

解宝は、義軍の仲間たちに報告できるように

周辺の地形をしっかり調べ、

山から街道の入り口に出る方法や、船をどこに停泊させればよいか、

万が一ここへ官軍が来た場合、どのように出撃したらよいか、

漁師たちや町の人たちが安全に避難できるよう連絡する方法など、

さまざまな段取りをすべて考えついた。

そこで、弓矢を背にかつぎ、鋼の刀を腰にさすと、

向きなおって山頂から降りはじめた。

 

ひどく険しい山道を踏みしめながら降りていくと、

ふいに、ひとりの若者が白髪の老婆の体をささえて

歩いているところに出くわした。

ふたりが激しく声をあげて泣いていたので、

解宝は、ふたりの前にすばやく歩み寄って話しかけた。

 

「おばあさん、何をそんなに悲しんでいるんだい。

困っていることがあるなら、遠慮せずにおれに話してみなよ。

おれは梁山義軍の頭領で、解宝という者だ」

 

老婆は涙をぬぐいながら顔を上げ、

解宝の姿を上から下までじっと見つめた。

 

頭には破れた藁笠をかぶり、体には袖なしの半纏、

背にはひと張りの強弓をせおい、手には鋼の刀、

足は草鞋でかためた姿は、一見するとただの猟師だが、

逆八の字の眉はきりりと上を向き、

ふたつの黒い眼はきらきらと明るく輝き、

太い鼻とがっちりした顎に大きな口と、

その顔は威風凛々としていたので、

 

それと知った老婆は、せわしなく道ばたに土下座しながら、

「人々に害をなす悪を除き、

わしの三番目の孫の仇を討ってくれる豪傑を探そうと、

上の孫の金竜に頼んで、この老体を梁山の砦まで運んでもらい、

頭領の皆さま方に話をして、

力を貸してもらおうと思っていたのです」と、話し出した。

 

解宝は老婆を助け起こすと、

「何があったのか詳しく教えてくれ。

おれたち梁山義軍は、強欲な金持ちを懲らしめ、貧しい人を救い、

天に替わって正義を行なうことを目的としている。

そのためには金も財宝も惜しくはないぞ。

卑しい役人どもが権柄づくであんたを騙したとか、

金持ち旦那があんたを脅しつけたのなら、

おれたちがあんたの代わりに仕返ししてやろう。

どこの誰にどんな恨みがあるんだ?」と、聞き返した。

 

 

まずは、双尾蠍 解宝が、金山の頂上ちかくで

号泣しながら山を登る老婆と息子に出会ったところまで。

まとめ読みの続きは、また次回で。