京劇「三打祝家荘」観劇の覚え書き その2 | 水滸伝ざんまい

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中国四大名著の水滸伝について語るブログです。
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悪しからずご了承ください。

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物語の後半では、孫立以下の登州メンバーが登場。
馬丁になりすました楽和が、ワイロやヨイショで祝家荘の兵隊頭に取り入り、
砦に侵入し城門を開ける、半分創作のストーリー。

舞台脇の小さいスクリーンに、芝居と同時進行で、セリフの日本語訳が出るので、
中国語がわからなくても、問題なく楽しめる。

孫立一行の素性を疑う兵隊頭が、楽和にわざと質問する場面、
「どこから来たんだね」
「登州からだよ」
「どこへ行くんだい」
「東京だよ」

ここで、(推定)十数人の観客からくすくす笑い。
字幕の「東京」(トウケイ)を、「東京」(トウキョウ)と読んで、
東京公演にちなんだギャグ、と思ったらしい。

口が達者で機転が利く、という設定の楽和、こちらもスマートな二枚目。

侍従に化けた孫新は、楽和の引き立て役。
奥さんに「間抜けで色黒の大男」と言われる、鈍くさい三枚目キャラ。

おきゃんな侍女に変装した顧大嫂は、田舎者のふりをして、
「梁山泊の山賊って、髪が赤くて目が青くて、ノコギリみたいな歯なんでしょ、
ちょっと見てみたいわー」と、祝家荘の侍女から牢屋の場所を聞き出す。

孫立が、祝一族の信頼を得るため、わざと石秀を捕らえる場面で、
ちゃんと「鞭」を持って登場。

クライマックスの戦闘シーンは、京劇お得意の、アクロバティックな立ち回り。
側転・バク転は当たり前、しゃがんだ人の頭の上を飛び越えたり、
複数人が同時に槍を突き合う殺陣やら、バレエ顔負けの大回転やら、
大音響の演奏の中、派手なアクションの連続。

前半、祝家荘の迷路に惑わされる場面で、走り回っていただけの林冲と、
後半、牢屋の場面で、ひとことセリフを言うだけの時遷、
この2人にも、立ち回りではちゃんと見せ場があったので、
水滸伝好きとしては、かなり嬉しかった。

(時遷役の俳優さんは、実は日本人!
NHKの特集で紹介されたこともある、日本人初のプロ京劇俳優、石山雄太氏。)

物語のテンポがとても早い。
16場もある芝居、歌舞伎なら半日はかかりそうだが、
暗転をうまく使い、幕間1回・約2時間で終了。

今回の芝居で、最も残念だった点は、
一丈青が登場しなかったこと。


(イラスト)
上・祝ヒョウの変な隈取
真っ白な顔の上に、黒で下がり目とヒゲが描いてある。
京劇では、白い地色の顔は、基本的に悪人という設定。

中・欒廷玉の鉄棒
鉄棒、というよりは、十五夜ウサギの杵を凶悪にしたような形状の武器。

下・薪売りに変装した、イケメンの石秀