路線バスでは、

「早発」は禁止

です。

これは、法律(運輸規則)で決まっています。

「早発」とは、定刻より早くバスを発車させること 

を言います。


お客さんが、発車時刻の950分に間に合うようにバス停に着いたのに、

94950秒に出発してしまっていたら、

たった10秒違いだって乗れないことに変わりないわけで、

このルールは当然! ですよね。



でも、このルールを遵守するのは、運転士からするとなかなか大変です。



例えば、A駅発B駅行きの路線に、30個のバス停があるとします。


30個のバス停には、それぞれ発車時刻が決められており、時刻表も貼ってありますが、運転士がその全てを記憶、把握することは不可能です。


走りながら発車時刻を調べることもできませんので、

主なバス停56箇所の発車時刻が記載された「仕業表」

を携帯し、運転席に掲示して走ります。


なので、仕業表に記載のないバス停の発車時刻は、運転士の〝勘〟に頼って走るのが実際のところです。



さて、この発車時刻。


一番スムーズに、何事もなく運行した場合を想定して設定されていますので、

たいていの場合、バスは遅れます。


信号にかかる回数や時間、乗降するお客さんの人数、天候、道路の渋滞具合等によっては、

20分以上遅れることもあります。


遅れている時、特に朝は、

お客さんも時間と闘っていますので、

運転士は

安全はすべてに優先!

と唱えつつも、焦りを感じながら、

できるだけ急いで走っています。



一方、道が空いていたり、

お客さんの乗降がほとんどなかったりすると、

普通に走っていても、

「早発」になりがちです。


かと言って、バス停であえて停車し、時間調整をすれば、後続の車列に迷惑がかかります。


そこで、

わざとノロノロと走りながら、

時間調整をするわけです。


それでも、運がいいのか悪いのか、

あまりにもスムーズに進み過ぎる日には、


(次の信号、ひっかかれ!)


(次のバス停、お客さん待っていてくれないかなぁ…)


などと、急ぐ時とは真逆のことを祈りながら、ゆっくりと運転することになります。



ゆっくり運転の理由は、他にもあります。


立っているお客さんがいる時は、急ブレーキをかければ、車内転倒が起こります。


雨の日は、大きな車体のバスは、スピードを出せば、歩行者に水たまりの水を浴びせることになります。


夜間は、バス停に待つお客さんの姿を、見落とすわけにいきません



こんなわけで、

あえて、ゆっくりと運転する!


道交法31条違反を知ってか知らずか、

発車合図を出しているバスを、

後続車は、イライラしながら追い越して行きます。


休日、妻を乗せて自家用車でドライブすると、私のゆっくり過ぎる走りに、皮肉を言われることもあります(笑)😓


かく言う私も、普通に自家用車を運転していた時は、故意に、時間をかけて、

(ゆっくりと走ろう!)

なんて思うことは、まずありませんでしたし、


バスの後ろにつけば、

(ちっ、もっと速く走れよー!)

と、イラついていたことと思います。



それぞれの立場に立ってみなければ、

それぞれの振る舞いの理由は、わからない


ものなのですね。


相手の立場に立って考える

相手の立場を尊重し、思いやる


大変難しいことですが、

とても大切なこと です。

これを忘れた時、人々は争い、

人類は戦争という過ちを犯すことになるのでしょう。

おっと、また、元教員的なまとめとなりました(笑)


今日も私は、

ゆっくりと走ります!