日曜日、午前中のバスです。


3月も後半。

もう春休みの学生さんや、もうすぐ春休みの小中学生で、大型商業施設行きの便は混み合っていました。


平日は、ここから二つ先のバス停となる、『◯◯病院』が終点になる便が多いのですが、

土日祝日は、ここ大型商業施設止まりが多くなります。



終点の大型商業施設、最後に両替をしながら降りたのが、高齢のご婦人でした。


「ここが終点だったのね。病院行きは、どこで待てばいいかしら。」


「日曜日は、病院行きが少ないんですよ。すぐ来るかどうかわかりませんが、そこのバス停に来ますのでお待ちください。」


ご婦人は、両替した小銭から、ここまでの運賃、330円を支払って、降りて行かれました。



待機場所にバスを停め、次の病院行きを調べると、私のバスでした。

発車まで、まだ25分はあります。


ご案内したバス停に、先程のご婦人が立っています。

バスを降り、そのご婦人にかけ寄って、声をかけました。


「お客さん、次の病院行きは25分くらい後になりますね。」


「そう…。じゃあ、歩いた方が早いかしら。」


「そうですねぇ。歩けるなら、その方が…。」


でも、健脚でも15分はかかる道のりです。

ちょっと厳しいかな、と思いました。


「次のバスは、私の運転になります。

先程、ここまでの運賃をいただいたので、病院までの差額、30円だけお支払いくださればいいですよ。」


「それじゃあ、悪いじゃない。」


「いえ、駅から病院までは360円ですから、それで結構ですよ。」


「じゃあ、それまで、ぶらぶらして来ようかしら。」



そんな訳で、25分後。


病院経由のバスをバス停に着けると、先程のご婦人が並んでいます。

間に合うかどうか心配していたので、姿を見て、ホッとしました。


バスに乗ってこられたご婦人は、運転席の方に歩いてきました。


「これじゃあ、冷たすぎるかしら。」


ご婦人の手には、冷えたペットボトルのお茶が。


お茶を私に手渡すと、席に戻って行かれました。



バスは発車し、間もなく病院に到着。

降車時、約束通り、30円をいただきました。


私が、

「ありがとうございました。かえってお気を遣わせてしまい、申し訳ありません。」

と言うと、


「いいえ、こちらこそ、ありがとうございました。」

と、お礼を言って降りて行かれました。



大型商業施設から病院まで、改めて運賃をいただいたとしたら、180円。


せっかく運賃が30円になっても、ペットボトルのお茶を買ってしまっては、同じくらいの出費になったことでしょう。


これでは、元も子もありません。



でもね·····。


私も、

きっとあのご婦人も。


同じ出費でも、この180円は、

二人の心をちょっぴり温かくし、少し幸せな気分にすることができた180円だったんじゃないかな·····。

なーんて気がしています☺️


冷えたペットボトルのお茶は、とても温かいお茶でした。