※サービス業ですので、お客さん→お客様、乗ってくる→乗ってこられる、のように、常に敬語を使うのが正しいのでしょうが、思うがままに記しています。結果、表記がバラバラですが。
私は運転席から、乗り込んでくるお客さんたちの様子を、ルームミラーで見ていました。
ある日の夕方、大型商業施設から団地経由の某駅行きバスです。
バッグを引いて運ぶ形の買い物カートと共に、年配の女性客が乗ってきました。
買い物カートを席に置くと、バスから降り、待合いのベンチから、3〜4個のレジ袋を持って、再び乗車されました。
(たくさん、買い物をしてきたんだな。)
と思って、ミラー越しに見ていました。
バスは発車し、途中駅で多くのお客さんを吐き出します。
乗客は、先程の女性客を含めて2人だけになっていました。
ある団地前のバス停で、降車ボタンが押されました。
先程の年配の女性客が、買い物カートを引いて、シルバーパスを見せると、前扉から降車されました。
降りるのも、なかなか大変なご様子。
まだ、レジ袋は車内に置いたままです。
降りたバスの外から、
「荷物があるから、ちょっと待って。」
と私におっしゃっるので、
「はい、じゃあ後ろのドア開けますね。」
と、後扉を開きました。
すると、乗車していたもう1人のご婦人が、座席に残されていたレジ袋をすべて持つと、後扉から降車されていきます。
バス停近くのベンチに、3〜4個のレジ袋を置くと、
後からバスを降りたご婦人から、
「ちょっと待っててください。」
との声。
(2人目に降りた方は、運賃を払いに戻って来られるつもりだな。
お二人とも、この団地に住む知り合いなんだろう。)
そう思って待っていると、その方は再びバスに乗り込み、座席に腰を下ろしました。
年配の女性客は、その方と私に向かって、バスの外からお礼を言っています。
そうです!
2人目に降りたご婦人は、このバス停で降りるわけではなく、恐らくご近所の知り合い同士でもなく、ただ、荷物を持って、運んであげただけなのでした。
ご婦人は、さらに3つ先のバス停で降りられました。
降車の際、私が、
「先程は、ありがとうございました。助かりました。」
と言うと、
ご婦人は、
「いいえ〜。」
と控えめに一言。
閉まったドア越しに、私に丁寧にお辞儀をしてから、バスを離れて行きました。
(サッと人助けができるって、素敵だなぁ。)
人を笑顔にできることは、人を幸せにできること。
災害ボランティアとか、やりたいと思っていてもなかなか難しいのが現実ですが、
こんな小さなボランティアなら、ちょっとの勇気でできそうです。