【 研修その1】

〜免許更新制度〜


教員は自己研鑽し、専門職としての技能を高めることが義務付けられています。


教育基本法では、


第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。


と定められています。


つまり、「研修」は教員の義務ですから、仕事の一部なのです。



私が考えるに、教員が行う「研修」は、大きく二つの種類に分けられると思います。


①与えられる研修

…どの教員も同一レベルの指導ができるように、同一プログラムで組織的に行われる研修。


②自分でやる研修

…得意分野を深めたい、不得意分野を克服したい、という思いから、個々が主体的に行う研修。


多忙を極める学校現場で、この二つのどちらが優先されるかと言えば……言うまでもなく、①!



さて、①の代表格。

記憶に新しいのが、安倍晋三首相時代に導入された「教員免許更新制度」です。


「教員の質を高める」という大義名分を謳いながら、不適格教員の排除を意図した(?)、アレです。


教員として必要な資質や能力の保持するため、定期的な最新の知識技能を習得するといいながら、研修内容はお粗末そのものでした。


"教員の資質や能力を高める研修" とは?

を真剣に検討することなく、各大学に丸投げしただけ。


しかも、3万円の費用は教員の個人負担というのですから、ひどいものです。



かく言う私は、免許更新制度開始の初年度対象教員でした。


貴重な夏休みを、規定の30時間も講習に費やしたくなかったので、某私立大学の通信講座を受講しました。


白川郷合掌造りの建物の構造や、沖縄の伝統文化エイサー…などの講義をDVDで視聴しながら、

(これが、教員の資質や能力と、どう関係するのだ!!)

と、疑問を持つどころか、あきれながらメモを取りました。


夏休み明けの休日に、修了試験を受けなければならなかったので、適当に聴き流しているわけにはいきません。


教員養成系大学の、教員を目指す学生向けの講義でさえ、教育現場では役に立たない、机上の空論であると言われることも多いのに…。


少なくとも私の受けた教員免許更新研修は、単なる一般教養の域を出ないものでした。


豊かな教養を身に付けるのが免許更新制度の目的なら、文句は言いませんが。


その後、教育養成系大学などを中心に、本当に教員の資質を高める内容の研修も増えては来たようです。


しかし、そのような、教員にとって本当に役立つ講座は競争率が高く、希望しても、なかなか受講できないのだとも聞きました。



平成21年に導入された同制度は、多くの批判を受けながらも長く教育現場を苦しめ続け、令和4年にようやく事実上の廃止に至りました。


記事27にも書きましたが、教員に対する世間の厳しい目、マスコミの批判的論調に応える形で、"信用できない"教員に、上から研修を与えたのが、この免許更新制度と言えるでしょう。


現役教員のみならず、退職教員の免許も期限付きとし、更新しなければ失効しましたから、

(もういいよ。この年齢で、3万円払って30時間も研修受けるなんて…。)

と、臨時講師等の要請があっても、復職をあきらめた元先生方がたくさんいました。


教員のさらなる多忙化と信頼感の低下をもたらし、さらには個人に研修費を自己負担させたこの悪制が、現在の教員なり手不足につながったことは否定できません。