令和6年5月歌舞伎座夜の部 四千両小判梅葉 | 癸の歌舞伎ブログ

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令和65月歌舞伎座夜の部 四千両小判梅葉

 

四千両小判梅葉 シセンリョウコバンノウメノハ

 

当ブログの過去記事より

平成292月歌舞伎座昼の部 四千両小判梅葉

 

四千両小判梅葉 シセンリョウコバンノウメノハ

河竹黙阿弥作。明治十八年十一月東京千歳座初演。

初演時配役は

五世尾上菊五郎(富蔵)、九蔵時代の七世市川團蔵(藤岡藤十郎)、我童時代の十一世片岡仁左衛門(牢名主松島貫五郎)、四世尾上松助(うどん屋六兵衛、隅の隠居音羽屋勘右衛門)、三世河原崎国太郎(富蔵女房おさよ)、二世尾上菊之助(巾着切り長太)、中村伝五郎(生き馬の眼八)ら。

安政二年の江戸城御金蔵破り事件に取材している。黙阿弥はこれ以前安政六年にこの事件に取材して十六夜清心を書いたが、江戸時代の事ゆえ全く原型をとどめないくらい改変させられてしまった。明治になって実名で実録風に書いたのがこの狂言である。といっても黙阿弥が二十四年間も執念深く同事件の再脚色を狙っていたわけではなく、のちに市村座で二長町時代を築く興行師田村成義の思いつきであった。田村はもと牢屋敷に役人として務めており、当時の入牢経験者に知り合いがいてその人達に江戸時代の牢内の様子を菊五郎に詳しく伝えさせたという。したがってこの狂言の牢内の場は江戸時代の牢内の様子をかなりよく伝えるものであろう。

今回配役は

尾上菊五郎(富蔵)、中村梅玉(藤岡藤十郎)、市川左團次(牢名主松島奥五郎)、中村東蔵(うどん屋六兵衛)、中村歌六(隅の隠居)、中村時蔵(富蔵女房おさよ)、尾上菊之助(寺島無宿長太郎)、市川團蔵(生き馬の眼八)ら。

四谷見附。水音で幕開く。板付きで富蔵、おでん屋商い。昔の知り合いに酒、おでんをふるまう。藤十郎と思いがけず出合い、藤十郎の悪事を見抜くついでに自らの大事を明かす。

藤岡内。風音で幕開く。ものすごく遅い木魚入り合方で、富蔵、藤十郎千両箱持って帰ってくる。

熊谷宿。雪おろしで幕開く。役人のはからいで唐丸籠を囚人ゆかりのものに任せて放置するというブレーブな措置だが、泣かせる場である。

牢内。下座なく囚人たちのかけ声が下座がわりである。

言い渡し。ただ法的手続きを見せるだけであるが、富蔵、藤十郎の神妙な態度に心を打たれる。富蔵「大牢、おでえもくをたのむぜ」、藤十郎「二軒牢、お題目を頼むぜ」で題目太鼓となり幕。

 

今回配役は

尾上松緑(富蔵)、中村梅玉(藤岡藤十郎)、中村歌六(牢名主松島奥五郎)、坂東彌十郎(うどん屋六兵衛)、市川團蔵(隅の隠居)、中村梅枝(富蔵女房おさよ)、尾上左近(寺島無宿長太)、市村橘太郎(生き馬の眼八)ら。

前回から半分世代交代している。