新必殺仕置人 迷信無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 迷信無用

『新必殺仕置人』「迷信無用」

(『新・必殺仕置人』「迷信無用」)

テレビ映画 トーキー 54分

カラー(一部白黒)

昭和五十二年(1977年)十月十四日放送

 

製作国 日本

製作言語 日本語

    ◎

 

 オープニングナレーション

 

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 井戸の深い底を思う。

 

 美人おもんは悩んでいる。前の夫が事故

で死んだことは自身が丙午の女であるから

だという観念に苦しんでいるのだ。

 夫仙太郎はおもんを励ます。仙太郎・も

ん夫妻は材木問屋檜屋の大黒柱だ。もんの

亡き父の後添おかつと番頭久蔵の存在感は

店において大きい。

 

 材木現場で仙太郎と久蔵は挨拶を交わす。

事故が起きて仙太郎は亡くなる。おもんは

自身が丙午の女であることが原因かと悩む。

 

 神社に参拝するおもんを見て念仏の鉄は

声をかける。彼女の美貌に惚れた鉄は誘い、

ゆきずりの男と女が出会い一度だけ抱き合

って一度きりに徹しきれる男なんだと告げ

る。

 触らないでとおもんは拒否する。彼女は

深く悩み悲しむ。鉄は彼女を抱きたいとい

う欲望よりも、おもんの悩みが気になる。

 

 己代松の家に来た鉄はお前に女を世話し

たいと申し出るが、松は笑って拒否する。

正八から口説いた美人に困っている鉄の噂

を松は聞いていた。

 

 檜屋ではおかつと久蔵が寝間で新たな陰

謀を語り合っている。

 

 手代の定吉も二人の手下であった。先代

の主人であるおもんの父が亡くなったこと

は、久蔵・おかつ・定吉の犯行で、おもん

が丙午生まれであることが要因であること

に見せかけていたのだ。

 

 三人の悪事に気付いた番頭の嘉吉は寅の

会に依頼する。鉄が競り落とす。

 観音長屋で死神は主水の後をつける。主水

は正八に死神に監視されていることを報告し

た。正八は「お役目ご苦労様です」と主水に

頭を下げる。

 

 鉄は死神に役人に眼を付けられているよう

だから、尾行してくれと頼む。死神は主水に

注意する。

 

 

 おかつは入浴中に嘉吉に警告される。

 

 久蔵と定吉は嘉吉を捕え首吊り自殺に見せ

かけて殺害する。

 

 おもんは嘉吉が自殺したと聞き驚愕し檜

屋に戻る。おかつ・久蔵・定吉はおもんを

心配して嘉吉は首を吊ったのであり、長く

店を開けたことはけしからんと糾弾し店か

ら出て行くようにと責める。

 

 悲しみのおもんは鉄を尋ね抱き着く。鉄は

おもんを抱かずに話を聞く。「丙午の女だか

ら」なんてのは迷信だと鉄は注意する。

 

 

 

 瓦版屋が檜屋の御新造さんは丙午の生まれ

で御気の毒と語る言葉をおもんは聞き煩悶す

る。

 

 全て自分が悪いと思い込めば辛くなるのは

当たり前だと鉄はおもんにつげた。いじめら

れれば跳ね返せとアドバイスを送る。

 

 正八から瓦版記事を聞いた鉄は夜に瓦版屋

を呼び出して殴り、記事のネタ元を聴き、売り

こみがあったことを聞く。

 

 正八の調べで、全てはおかつ・久蔵・定吉

の陰謀であることを鉄は知る。

 

 定吉は井戸の前で主水に斬られて井戸に放り

込まれる。

 

 久蔵は己代松の鉄砲で射殺される。

 

 おかつは久蔵と布団に入り込んだ鉄を久蔵と

思い込む。

 

 鉄は布団を被ったまま立ち上がりおかつを

骨はずしで殺害する。

 

 観音長屋で正八はおもんが元気になって檜

屋の商売を切り盛りしていることを鉄に告げ

た。

 

 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 

 河原崎建三(死神)

 

 

 

 鮎川いづみ(おもん)

 

 

 島田順司(久蔵)

 森秋子(おかつ)

 

 

 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 

 石田信之(定吉)

 海老江寛(嘉吉)

 

 

 水上保広(仙太郎)

 中塚和代(小娘)

 大橋壮多(瓦版売り)

 

 北村光生(吉蔵)

 三星東美(町の女)

 倉谷礼子(町の女)

 

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 

 スタッフ

 

 制作    山内久司(朝日放送)

       仲川利久(朝日放送)

       桜井洋三(松竹)

 

 脚本    保利吉紀

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 

 

 撮影      藤原三郎

 製作主任    渡辺寿男

 

 

 

 

 美術      川村鬼世志

 照明      中島利男

 録音      木村清治郎

 調音      本田文人 

 編集      園井弘一

 

 

 助監督     服部公男

 装飾      玉井憲一

 記録      野口多喜子

 進行      佐々木一彦

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪    八木かつら

 衣装      松竹衣裳

 小道具     高津商会

 現像      東洋現像所

 

 殺陣      楠本栄一

         布目真爾

 

 題字      糸見渓南

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 

 

 主題歌     あかね雲

 作詞      片桐和子

 作曲      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 唄        川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 制作協力     京都映画株式会社

 

 監督       原田雄一

 

 

 制作      朝日放送 

         松竹株式会社

 

 ◎

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 鮎川いづみ→鮎川いずみ

 

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 山崎努=山﨑努 

 

 

 山内久司=松田司

 

 野口多喜子=嵯峨忍

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 ◎

 早坂暁はノークレジット

 ◎

 念仏の鉄 山崎努

 

 この字幕は起こしで表示される。

そのムードを想い、大きな活字で

表記してみた。

 ◎ 

 鉄の恋・情・友愛

 ◎

 第三十八話「迷信無用」は念仏の鉄にお

ける美人おもんへの想いが主題だ。商家の

美しい御新造さんに一目惚れして口説き誘

う鉄っあん。だが、彼女が深い悩みを抱いて

いることを知り、性欲に燃えていた筈が挑

めなくなり、彼女の苦悩の因を探るように

なっていく。

 

 恋と性欲に燃えていた女好き鉄がだんだん

とおもんの悲しみを知り寄り添っていく。

 

 山﨑努と鮎川いづみ後の鮎川いずみが男

と女の清い友情を繊細に表してくれた。

 

 鮎川いづみの輝ける美しさを原田雄一監督

と藤原三郎キャメラマンは鮮やかに映し出す。

鉄が惚れたのもよく分かる。

 

 鮎川いづみは昭和二十六年(1951年)三

月八日に誕生した。本名は加藤千枝で玉尾豊

光と結婚し玉尾千枝となった。

必殺仕置人  ぬの地ぬす人ぬれば色

 『必殺仕置人』「ぬの地ぬす人ぬれば色」

では虐められて死を選ぶヒロインゆきを体当

たりで演じた。

 今回は虐められ迷信に悩み自責の念を覚え

鉄に救われるおもんを繊細に演じた。

 

 井戸の深い水底、茶碗の水分に映るおもん

の顔、逆立ちの鉄の視線に呼応して回転する

キャメラに映される正八。

 

 原田雄一の映像魔術に痺れる。

 

 ホラーや怪奇のムードを思わせ丙午の女で

ある私のせいで事件が起きてると悩むおもん

の内面が映されて行く。

 

 森秋子の悪女おかつは凄みがある。

 

 結束信二脚本テレビ映画『新選組血風録』

『燃えよ剣』で沖田総司を当たり役にした

島田順司が色悪久蔵を鮮やかに勤める。

 

 『ミラーマン』鏡京太郎役者石田信之は悪

役定吉を鋭く探求する。

 

 第三十八話は二枚目ヒーロー役者達がした

たかな悪を演ずるという点も特徴的だ。

 

 迷信に怯え悩み苦しんでいたおもんが鉄の

励ましで再生した。

 

 このことが正八の台詞で語られ、おもんが

映らないことで視聴者の想像が掻き立てられ

る。

 

 保利吉紀脚本の省略に痺れる。

 

 敢えて晴れやかなおもんを映さない。

 

 鉄は一人速足でかけて正八に振り替える。

 

 山﨑努がラストカットで見せる瞳は光って

いる。微笑みつつ切ないムードも感じられる。

 

 念仏の鉄が『新必殺仕置人』においてラス

トカット・ラストショットに映るのは今回が

最後である。

 

 

             南無阿弥陀仏