新必殺仕置人 自害無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 自害無用

『新必殺仕置人』「自害無用」
(『新・必殺仕置人』「自害無用」)
 

テレビ映画 トーキー 54分

カラー(一部白黒)

昭和五十二年(1977年)九月三十日放送

 

 

製作国 日本

製作言語 日本語

    ◎

 

 オープニングナレーション

 

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 死神は岡っ引きを追う。岡っ引きの男

は川に潜る。死神は銛を川に打ち込み岡

っ引きを殺害する。

 

 寅の会において奉行所に注意されている闇

の俳諧師の一人が死神に粛清される。

 虎は寅の会の一時休会を決め、闇の俳諧師

達に身辺に注意するように命じた。

 

 南町奉行所では筆頭与力福原九一郎が仕置

人探索に力を傾注している。

 福原屋敷でお糸・粂次の若い姉・弟が働い

ている。

 

 りつは福原屋敷の大掃除を手伝い福原夫妻

に讃えられる。

 

 与力神崎は福原に仕置人一党の捕縛を命じ

る。

 

 

 福原の妻志乃はかつて芸者をしていた。芸

者として奉公している時期にお糸・粂次姉弟

を産み二人と別れた。

 

 粂次は母の行方を父斎藤半蔵に聞くが、半

蔵は答えず追い返す。元伝馬町で牢屋敷の同

心をしていた半蔵は主水の上司であった。今

は遊郭の用心棒をしている。

 鉄は嗅ぎまわってる連中を調べさせてくれと

虎・死神に頼むが拒絶される。

 

 九一郎の部下鏡は奥方様の不貞疑惑を調べ

たいとして、粂次に奥方様に迫ってくれと頼

む。粂次は断る。狂言であって迫れば後はす

ぐに解き放つと福原からも提案があった。

 

 実母とも知らず、粂次は粂次は志乃に迫る

狂言を為す。ところが鏡は粂次を無残に斬り

捨てた。

 

 九一郎は志乃を離縁する。

 

 お糸は鏡から志乃に誘惑された粂次がお手

討ちになったと告げられ、弟の仇を志乃と思

いこむ。鏡は仕置人の噂をお糸に伝える。

 

 糸は包丁を持って志乃を襲うが、主水に制

止される。

 

 福原・鏡の狙いは、糸に志乃仕置を仕置人に

依頼させて仕置人を一網打尽にすることであっ

た。

 

 鉄はお糸の相談に乗る。お糸は鉄に仕置人に

仕置を頼みたいことを述べる。鏡は粂次の墓の

前でお糸に仕置人との接触を問う。お糸は仕置

人に仕置を頼んだが、誰に相談したかは秘める。

 

 福原・鏡の狙いを知った鉄と己代松と主水

は二人の仕置を決める。正八は寅の会を通さ

ずに仕置をすれば粛清されると怯える。

 

 志乃はお糸に手紙を書いた。幼い頃に糸と

粂次を捨てたことを詫びる。我が子粂次を誘

惑していないことを強調した。

 

 鉄は鏡をおびき寄せ骨外しで苦しめ、松が

竹鉄砲でとどめを刺した。

 

 主水が福原九一郎を奉行所で刺殺した。

 鉄は虎・死神に面談し寅の会を通さずに仕置

したことを詫びて仕置料を出し処罰も受けると

申し出た。

 虎は鉄を許す。

 

 志乃は我が子粂次の墓の前で自害した。

 

 お糸は母志乃の手紙を読み泣く。

 

 主水は斎藤半蔵に、粂次・志乃の訃報とお糸

が健在であることを伝えた。

 

 斎藤半蔵は落ち着いて聞き遊郭の戸を閉めた。

 

 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 

 河原崎建三(死神)

 

 

 新田昌玄(福原九一郎)

 

 

 荒砂ゆき(福原志乃)

 テレサ野田(お糸)

 

 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 

 大林丈史(鏡文十郎)

 藤江喜章(粂次)

 汐路章(斎藤半蔵)

 

 

 西山辰夫(与力神崎)

 小柳圭子(女郎屋おかみ)

 北村光生(吉蔵)

 マキ(屋根の男)

 

 

 黛康太郎(同心)

 宮川珠季(同心)

 西川トキコ(おれん)

 三星東美(長屋のおかみ)

 丸尾好広(岡っ引き)

 

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 遠山欽(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 スタッフ

 

 制作    山内久司(朝日放送)

       仲川利久(朝日放送)

       桜井洋三(松竹)

 

 

 脚本    疋田哲夫

       志村正浩

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 

 

 撮影      藤原三郎

 製作主任    渡辺寿男

 

 

 

 

 美術      川村鬼世志

 照明      中島利男

 録音      木村清治郎

 調音      本田文人 

 編集      園井弘一

 

 

 助監督     服部公男

 装飾      玉井憲一

 記録      野口多喜子

 進行      佐々木一彦

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪    八木かつら

 衣装      松竹衣裳

 小道具     高津商会

 現像      東洋現像所

 

 

 

 殺陣      美山晋八

         布目眞爾

 題字      糸見渓南

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 

 

 主題歌     あかね雲

 作詞      片桐和子

 作曲      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 唄        川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 制作協力     京都映画株式会社

 

 監督      工藤栄一

 

 

 制作      朝日放送 

         松竹株式会社

 ◎

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 荒砂ゆき=田原文子

 

 

 小柳圭子=小栁圭子

 

 

 マキ=真木勝宏

 

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 山崎努=山﨑努 

 

 

 山内久司=松田司

 

 野口多喜子=嵯峨忍

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 ◎

 早坂暁はノークレジット

 ◎

 念仏の鉄 山崎努

 

 この字幕は起こしで表示される。

そのムードを想い、大きな活字で

表記してみた。

 ◎ 

 

 寅の会 厳しき組織

 ◎

 冒頭死神が岡っ引きを追い、川に逃げられ

銛で刺殺する。衝撃のシーンから始まる。

 河原崎建三が死神の冷厳さを厳かに見せる。

ベテラン丸尾好広が犠牲になる公儀密偵の岡

っ引きを川に飛び込んで体当たりで演じる。

 

 開巻のアクションは工藤栄一監督の凄みが

効いている。

 

 寅の会においても奉行所に眼を付けられた

という理由で俳諧師の一人が死神に粛清され

る。

 

 遠山欽演ずる俳諧師が無残に河原崎建三演

じる死神に斬殺される。

 

 寅の会一時休止を語る虎を藤村富美男が重厚

に演じる。

 

 志乃とお糸・粂次という親子三人が関わりを

明かせぬまま、粂次・志乃が亡くなる。このド

ラマの骨格への着眼は鋭いが、ドラマ作りで焦

った印象を受けた。

 

 疋田哲夫が書いたシナリオを志村正浩が直し

たという。

 志乃・お糸・粂次の親子三人関係性と福原・

鏡の仕置人探索のドラマが盛り込む内容が多

すぎて54分に収まり切れなかった印象を受け

た。

 

 『必殺仕置人大全』によると、初めはおてい

がメインのドラマでお糸・粂次と心の交流があ

ったという。この構成には関心がある。

 

 完成版は志乃が我が子粂次に狂言とは言え迫

られ、その息子を殺され、誘惑したという濡衣

を着せられ、娘であるお糸に恨まれて苦悩する。

 

 これが説明的な台詞が多く、視聴者の胸を熱く

するまでに至っていない。

 

 荒砂ゆきの重い存在感、テレサ野田の可憐さ、

藤江章喜の直向きさを得ながら、工藤栄一はド

ラマで情を明かしきれなかった。

 

 新田昌玄、大林丈史の悪役上司・部下は鋭い

存在感を見せる。

 

 鉄がカンフー的アクションで鏡の骨を外すが、

鏡は死なず、己代松の竹鉄砲でようやく倒され

る。大林丈史は第一話の屋根突っ込まれに続き

体当たりのアクションを見せる。

必殺仕置人 賭けた命のかわら版

 『必殺仕置人』「賭けた命のかわら版」に続き

工藤栄一は汐路章に悪役ではない役をオファーし

た。汐路章は孤独を噛みしめる斎藤半蔵で哀愁を

見せた。

 

 クライマックスで虎・死神が殊勝に詫びる鉄を

許す場面も印象的だ。

 

 藤村富美男はプロの役者ではないが、視線・

台詞回し・歩き方に元締の貫録があった。

 

 わたくしは残念に感じた事を書いたが、個々の

シーンには名匠工藤栄一らしい煌めきがあり、惜

しい作品として第三十六話を見ている。

 

 ラスト、志乃・粂次の訃報を聞き、お糸が元気

であることを聞いた半蔵は何事もなかったように

落ち着きを保ち静かに遊郭の中に戻る。

 

 汐路章の渋い演技は、半蔵の心に何が起こって

いたのかという問いを私に与えてくれた。

 

                南無阿弥陀仏