新必殺仕置人 誘拐無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 誘拐無用

『新必殺仕置人』「誘拐無用」
(『新・必殺仕置人』「誘拐無用」)

テレビ映画 トーキー カラー(一部白黒)

54分  

カラー(一部白黒)

昭和五十二年(1977年)七月八日放送

 

製作国 日本

製作言語 日本語

 

 オープニングナレーション

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 豪商備後屋甚兵衛は岳父の畳奉行田原の

威光で莫大な財産を築いた。

 妾えんと遊んだ後夜道でやくざの喜三次

と音吉が備後屋を強請る。田原の隠し子の娘

蝶が備後屋の妻であることを音吉・喜三次

は知っていた。妾通いをしていることを田原

に密告するぞと二人は備後屋を脅す。

 

 備後屋が飲み屋で二人の話を聞いていると

来店した中村主水がその光景を見つめた。

 

 お蝶の愛息正吉は正八の友でもあった。田

原は武士の身であったが、正吉には「お爺ち

ゃん」と呼ばせており、孫を溺愛していた。

 

 喜三吉と音吉は正吉を誘拐し、備後屋に

二百両の金を身代金として要求する。

 

 お蝶は泣いて「二百両を出してやって下さ

い」と夫甚兵衛に頼んだ。

 

 備後屋は「血の繋がりがなくとも正吉は私

の子だ」と述べ二百両を渡す。

 

 音吉と喜三次は甚兵衛の指示通り、金を持

ってきた蝶も拉致し正吉と同じ畳蔵に監禁し

た。

 

 正八と女友達しんが畳蔵近くで逢引する。

喜三次と音吉は緊張する。正八とおしんは

お蝶・正吉が近くで監禁されているとは知

らず去る。

 

 黒幕は備後屋甚兵衛であった。田原に頭が

上がらない備後屋は、お蝶と血の繋がらない

子正吉が邪魔であった。おえんを妻に迎えたい

という欲望も抱いていた。

 

 南町奉行所筆頭同心秋月は備後屋から持ち

掛けられた話に乗る。

 

 主水の探索もあり、お蝶と正吉が拉致された

畳蔵が突き止められた。

 

 秋月は一人で畳蔵に乗り込み、喜三太・音

吉・お蝶・正吉の四人全員を斬殺した。喜三

太・音吉の犯行として秋月は事件真相を歪曲

する。備後屋は嘘泣きで号泣する。

 

 真相を喝破した田原は寅の会に備後屋・秋

月仕置を依頼した。

 

 

 
 
鉄が競り落とした。
 おえんと遊ぼうとした備後屋は風呂が
壊れ、銭湯にお風呂を借りに行きますと
いう彼女の言葉を聞いた。
 
 妾宅でおえんの帰りを備後屋は待って
いた。
 
 己代松は石灯篭から竹鉄砲を放って備
後屋甚兵衛を射殺する。
 
 秋月は小舟に芸者を侍らせ豪遊してい
た。
 
 鉄は正八が船頭を勤める小舟で近付き、
一瞬の隙を突いて秋月を骨はずしで殺害
した。秋月が倒れ芸者たちは驚愕する。
 
 鉄が乗り正八が漕ぐ小舟は静かに走り
去った。
 
 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 河原崎建三(死神)

 

 

 マキ(屋根の男)

 
 
 小宮守(喜三次)
 川崎あかね(おえん)
 
 
 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 

 岩田直二(奉行田原)

 吉本真由美(おしん)

 

 多田和生(正吉)

 波多野克也(音吉)

 北村光生(吉蔵)

 平井靖(浅吉)

 

 伊波一夫(居酒屋の親爺)

 松尾勝人(番頭)

 加茂雅幹(同心)

 丸尾好広(同心)

 鈴木義章(同心)

 

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 伴勇太郎(闇の俳諧師)

 

 小坂一也(備後屋甚兵衛)

 

 赤座美代子(お蝶)

 

 須賀不二男(同心秋月)

 

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 

 

 スタッフ

  

 

 

 制作      山内久司(朝日放送)

         仲川利久(朝日放送)

         桜井洋三(松竹)

 

 脚本      保利吉紀

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 

 

 

 撮影      藤原三郎

 製作主任    渡辺寿男

 

 

 美術      川村鬼世志

 照明      中島利男

 録音      木村清治郎

 調音      本田文人 

 編集      園井弘一

 

 

 助監督     服部公男

 装飾      玉井憲一

 記録      野口多喜子

 進行      佐々木一彦

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪    八木かつら

 衣装      松竹衣裳

 小道具     高津商会

 現像      東洋現像所

 

 殺陣      美山晋八

         布目眞爾

 題字      糸見渓南

 

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 

 

 主題歌     あかね雲

 作詞      片桐和子

 作曲      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 唄        川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 制作協力     京都映画株式会社

 

 

 監督       松野宏軌

 

 

 ☆

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 マキ=真木勝宏

 

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 

 山崎努=山﨑努

 

 

  山内久司=松田司

 

 

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 ☆

 小坂一也本篇クレジットは「備前屋」表記

 

 早坂暁はノークレジット

 ☆

 静かな巨悪

 ☆

 

 「誘拐無用」は二枚目俳優・歌手小坂一也

の悪役演技が光っている。

 小坂一也は昭和十年(1935年)五月三十日

に誕生した。 

 平成九年(1997年)十一月一日、六十二歳

で死去した。

 

 歌手・俳優として活躍した。昭和三十六年

(1961年)十二月十五日に封切られた山田洋

次第一回監督作品『二階の他人』では真面目で

繊細な会社員葉室正巳を演じた。山田洋次映画

監督作品の歴史で最初の主演は小坂一也である。

この作品には正巳の真面目さに依存して博奕打

ちに夢中になる小泉久雄を平尾昌章後の平尾昌

晃、正巳の妻明子を狙う上司の三田村を須賀不

二男が演じている。

二階の他人 昭和三十六年 山田洋次監督作品

 正巳の繊細で優しい人柄を小坂一也が鮮やか

に表した。

 

 その小坂一也が演じる備後屋甚兵衛の悪の

魅力は強烈である。脅されて可哀相というイ

メージを見せておいて、脅迫者も利用し妻と

血のつながりのない息子を狙い四人とも秋月

に殺害させる。

 

 小坂一也は静かな演技で視聴者に憎たらしさ

と恐ろしさをじっくり実感させてくれる。

 

 赤座美代子は哀しみのヒロイン蝶役で母性を

豊かに見せた。

 

 須賀不二男は「貸借無用」、岩田直二は「暴

徒無用」以来で、ベテラン二人はそれぞれ二度

目の出演であった。

 

 秋月の冷酷さを悪役名優須賀不二男が粘り強く

演じる。

 

 子供達と仕置人の交流を描き、仕置人が子供に

父性愛を感じ別れを惜しむドラマがこれまで保利

吉紀の名シナリオで描かれた。

 

 今回は正吉も犠牲になる。ドラマとはいえ悲し

い出来事だが、保利吉紀脚本と松野宏軌は冷静な

筆致で尋ねているので、視聴者の心に哀感が一層

強く響く。

 

 石灯篭の空間から松は竹鉄砲を発射する。

 

 着物を廻し倒れる備後屋の最期を小坂一也は

様式美を感じさせながら演じた。

 

 「貸借無用」以来の山﨑努と須賀不二男の競演

で今回秋月は後ろから鉄に襲われる設定であった。

 

 鉄と正八の小舟が夜の水路を歩む大詰に松野

宏軌演出の煌めきを感じた。

 

 

               南無阿弥陀仏