十三人の刺客（九）一六勝負 片岡千恵蔵生誕百十二年
『十三人の刺客』
映画 125分 白黒 シネマスコープ
昭和三十八年（1963年）十二月七日公開
製作国 日本
製作言語 日本語
制作 東映京都
企画 玉木潤一郎
天尾完次
脚本 池上金男
撮影 鈴木重平
照明 増田悦章
録音 小金井輝貴
美術 井川徳道
音楽 伊福部昭
編集 宮本信太郎
出演者
片岡千恵蔵（島田新左衛門）
里見浩太郎（島田新六郎）
丹波哲郎（土井利位）
水島道太郎（佐原平蔵）
加賀邦男（樋口源内）
沢村精四郎（小倉庄次郎）
阿部九州男（三橋軍次郎）
春日俊二（日置八十吉）
片岡栄二郎（大竹茂助）
汐路章（堀井弥八）
原田甲子郎（浅川十太夫）
嵐寛寿郎（倉永左平太）
西村晃（平山九十郎）
監督 工藤栄一
☆☆
池上金男＝池宮彰一郎
片岡千恵蔵＝片岡十八郎
＝片岡千栄蔵
＝植木進
里見浩太郎→里見浩太朗
沢村精四郎→二代目澤村藤十郎
嵐寛寿郎＝嵐徳太郎＝嵐和歌太夫
＝嵐長三郎
☆☆
関連記事
『十三人の刺客 昭和三十八年十二月七日
公開 工藤栄一監督作品（一）』
『十三人の刺客（二） 侍の道』
『十三人の刺客（三） 「修行が足りんな」』
http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-11809965924.html
『十三人の刺客（四） 侍心』
http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-11811101389.html
『十三人の刺客(五） 事の理非は問わん』
http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-11853336915.html
『十三人の刺客（六） 命と命をぶっつけあう』
http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-11856502410.html
『十三人の刺客（七） 「楽だと悟った」』
http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-11928514492.html
『十三人の刺客（八） 侍の絆 本日嵐寛寿郎生誕百十二年』
http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-11962294260.html
☆平成十四年（2002年）十一月十日
高槻松竹セントラルにて鑑賞☆
明石松平斉韶様御道中は進む。鬼頭半兵
衛の警護のもと、斉韶様を守る警備は万全の
体制が敷かれている。
島田新左衛門は甥新六郎・倉永佐平太・平
山九十郎と共に一室に居た。土井大炊頭利
位の手紙を読んでいた。
利位は「天下御政道の為、貴下の役職を
解く」と記した。
新左の勤めは、これで完全に斉韶様襲撃
の一事に絞られたのである。道場では佐橋
が樋口に、「どうせ死ぬ命だ。今のうちに手足
を休めとくんだな」と語り、酒を勧めるが、樋口
は断る。
雨が降る。松平斉韶様ご一行は高崎に入っ
た。
樋口が雨を浴びている。
倉永が樋口を呼び、全員を招集するように
告げる。一室に刺客全員が集うた。
倉永が方策を語ることを告げ、異論は許さ
ぬと厳しく命じる。
平山が地図を開き、方策を語る。
松平斉韶襲撃の地は、落合宿と決まった。
木曽では、先年息子夫婦の生命を奪われた
牧野靱負が居るので助力を頼み、尾張領内か
ら斉韶様に圧力をかけてもらう。
気位が高く短気な斉韶様は尾張で立往生と
なり、苗木領を通ることは御気性から言っても
御怒りになることは確かで、落合宿を通ること
は避けられないだろうと平山は解説する。
倉永が「異論はあるまいな？」と念を押すと、
三橋が「あります」と答え、落合宿に誘き寄せ
ることは可能かどうかを問う。
新左衛門「ここが勝負だ。
この人数で明石候の
行列を討つのは一六勝負だ。
天祐を待つしかない。
天祐を待つには人事を尽くさね
ばならん。
倉永。牧野靱負に協力を頼む
のは、おぬしを措いて他にない。
頼むぞ。」
倉永「かしこまりました。」
新左衛門は新六郎に三千七百両の金で
落合宿を一宿丸ごと買い取るように命じる。
新左衛門「甲州街道を突っ走って、
行列の前へ出るんだ！」
☆新左の一六勝負☆
松平斉韶の大名行列がゆっくりと行進
する。鬼頭半兵衛を初めとする家臣達は、
島田新左衛星門一党の襲撃に備えている。
その緊張感は、工藤栄一監督が映す
自然の爽やかな映像の中で溢れてくる。
平穏に見える空気の中でいつ起こるか
わからない戦い。
だが、新三一党も中々動けない。
土井利位は書を送って、御政道の為に、新
の役職を説くと告げる。
片岡千恵蔵の無言の表情における眼光は
鋭い。
丹波哲郎の声が響く。
幕府は、旗本島田新左衛門を完全に刺客に
した。
新左の進む道は、松平斉韶を討つか討たれ
るかしかないことが語られ、後戻りできない刺
客道であることが示される。
佐橋が酒を飲み、樋口は落ち着かない。
水島道太郎が冷めた台詞「どうせ死ぬ命だ。
今のうちに手足を休めとくんだな」を落ち着い
た口調で語る。
戦いを前にした男の達観がある。
加賀邦男の樋口は男の熱さがある。
半裸になって雨を浴びる。樋口は決戦を待
っているようにも見える。
倉永が一党を集める。
新左を中心に刺客全員が集う。
倉永は異論を許さず、平山氏の方策に従う
うにと命ずる。
池上金男は地図を巧みに用いて、平山が
落合宿に斉韶の行列を引き寄せ、封じ込め
て討とうとする計画を示す。
西村晃の落ち着いた口調が、平山の冷静・
明晰な作戦を語る。
新左は、落合宿に誘い決戦を挑むことは、
一六勝負なのだと強調する。
戦いにやり直し・指し直しは効かない。
男達が戦いに全てを賭ける。
斉韶の横暴に命を落とした者達の痛みと恨
みと悲しみを思いつつ、刺客達は大いなる敵
に挑むことに熱意を覚えたのである。勝てる訳
がないと思われる強敵に当たって砕けろの意
気込みでぶつかって行く。
極悪の暴君とはいえ、斉韶も尊い命を生き
ている。そのことに悩みつつ、理非を問わず
に為すべきことを為すと新左は決めた。
息子采女を殺害され、嫁千世を自殺に追い
込まれて、深く悲しんでいる牧野靱負に協力
を頼みたいと考え、倉永に使者の役割を命ずる。
片岡千恵蔵と嵐寛寿郎の二大スターの激
突競演は圧巻である。
新左と倉永は心と心でしっかりと絆を確かめ合
っている。
このシーンには登場しないが、月形龍之介の
靱負の存在感が、観客の心に響く。
新左は仲間達に甲州街道を走り、行列の前に
出るという試みを始める。
一天地六の大勝負が進みだした。
片岡千恵蔵が勝負に挑む男の生き方を深く重
く明かしてくれた。
文中敬称略
片岡千恵蔵生誕百十二年
平成二十七年（2015年）三月三十日
合掌
南無阿弥陀仏
セブン